最大の強みは『トライアンドエラーがしやすい』こと by DELICIOUS FACTORY 下北沢 後編

店を続けていくために、必ず考えることになる「お金」の問題。融資や補助金の活用から、日々発生する支出に至るまで、飲食店はそれぞれに悩みながらお金に向き合っているはず。当連載では、そんな「お金との向き合い方」について、様々な飲食店関係者にインタビューしていきます。

第三弾となる今回は、デリバリーを専門とする飲食店経営の形「ゴーストレストラン」に着目し、飲食店向けのシェアキッチン施設『DELICIOUS FACTORY 下北沢』に取材。全3回に渡って、「ゴーストレストランから考える、新しい飲食経営の形」についての考えを伝えていきます。

DELICIOUS FACTORYと考える、 " ゴーストレストラン"のお金との向き合い方

Point 1:開業資金を抑えて、「小さなスタートアップ」が可能に
Point 2:1店舗分の設備投資で、「他業態展開」を実現する
Point 3:最大の強みは、『トライアンドエラーがしやすい』こと(本記事)


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実店舗との組み合わせで見える、ゴーストレストランの未来

——ゴーストレストランの実情について、多くの意見を伺うことができました。「開業コストの低さ」というメリットを見るだけでなく、しっかりとした目的を持ってゴーストレストラン 運営に取り組むことが大切なんですね。

そうですね。先ほど話題に出た通り、ゴーストレストラン の最大のメリットは「小さいリスクで、他業態展開できる」こと。それはつまり、“なんども再チャレンジができる”ということでもあるんです。

——再チャレンジ、ですか?

株式会社フードテラス代表取締役_久保田様

ゴーストレストラン には、やはり多くの制約もあります。

デリバリーとテイクアウトが中心になるので、冷めてしまっても美味しいものだったり、温め直しても美味しい料理にするための工夫が必要になる。それに、店内飲食型の飲食店のように、料理人がお客さんに直接、料理のことを説明する…といったこともできません。

その代わりに、1店舗分の設備投資で、複数の業態にチャレンジできます。その過程で「世の中のお客さんにとって、どんな飲食が必要とされているのか?」を考え、ベストなお店の形を模索することができるのです。

少ないリスクでいろんな業態を実験できる、いわばトライアンドエラーがしやすい経営のかたちが、ゴーストレストランなんだと思います。「一か八かの事業にならない」というのが、最大の強みですね。

——最大のメリットは、「低コストで新しいチャレンジがしやすい」というところにあったんですね。開業のリスクを減らすだけじゃなくて、「変化することが前提」でいられるのは、先の読めない今の時代にもフィットしますね。

株式会社フードテラス代表取締役_久保田様

そして、それは実店舗との組み合わせによってより一層やりやすくなると思います。

収益に対して販売手数料のかかるゴーストレストランよりも、同じ人件費のままで客単価を上げたり、回転数を上げることも可能な店内飲食型の実店舗の方が、利益率を上げやすい。

だからこそ、「ゴーストレストランではチャレンジを、実店舗では安定した飲食店経営をして、ゴーストレストランの経営も支える」ということが可能になるんです。

DELICIOUS FACTORY 下北沢_テイクアウト販売
『DELICIOUS FACTORY 下北沢』が雇用した販売スタッフによる、テイクアウト販売も行われる。テイクアウト販売にかかる費用は手数料の12パーセントのみと、販売スタッフを各店が雇用するよりコストが安く抑えられる。こうしたサポートがあるのも、シェア型キッチン施設の利点でもある。

弊社のようなシェア型キッチン施設に入居する場合なら、ある程度の設備投資や立地面での条件などが揃っているため、「ゴーストレストランだけを運営する」ことも可能です。

ただ、これからゴーストレストランを開業したい、という方向けにはぜひ、「店内飲食型の実店舗とセットで経営を行うことを」とオススメしたいと思います。

——それはなぜでしょう?

やはり、開業してすぐにゴーストレストランのデリバリー売上だけを目当てにするのは経営的に難しい面があるためです。配送手数料の大きさや、テイクアウト容器の費用など、「ゴーストレストランだからかかる運用コスト」はとても大きく感じられるはずです。

——では、まだ実店舗を持たない、これから飲食店を開業したいという方がゴーストレストランにチャレンジするには、どうすれば良いと思いますか?

そういう方たちには、弊社のようなシェア型のキッチン施設を利用することをオススメしたいですね。

「シェア施設でのゴーストレストラン経営で評価された業態を、実店舗として実現させる」という流れを作り出すことができるためです。
トライアンドエラーを繰り返し、より大きな需要があるコンセプトはなにか試行錯誤したり、運営体制のブラッシュアップを行えるという意味ではゴーストレストランには大きな可能性があると思います。

実際に、『DELICIOUS FACTORY 下北沢』ではじめて飲食店をはじめて、今まさにいろいろ実験をされている方もいますよ。

KUROFUNE BURGER
ここがはじめての出店となる『KUROFUNE BURGER』。4種類の小麦をブレンドし、熟成させた「バンズの美味いハンバーガー」として売り出している。

最大の強みはトライアンドエラーがしやすいこと

おわりに

デリバリーを専門とした「ゴーストレストラン 」という経営スタイル。

内外装費やホールスタッフの人件費など、「開業資金を抑えることができる」というだけでなく、その最大のメリットは「低コストで新しい業態にチャレンジすることができる」というところにありました。

世の中の需要と向き合うために「変化を続けること」こそ、ゴーストレストランが抱いている最大の可能性だと言えるでしょう。


写真:藤原 慶 編集:Huuuu

DELICIOUS FACTORY 下北沢

〒155-0032 東京都世田谷区代沢5丁目8−10

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今回は3記事にわたりゴーストレストランの強みと注意点についてご紹介しました。

本連載では、飲食店が店づくりを続けていくために、必ず考えることになる「お金」の問題をピックアップ。融資や補助金の話から、日々発生する「お店から出ていくお金」に到るまで、さまざまな飲食店の「お金に対する考え方」を聞いていきます。

お店によって全く異なるさまざまな向き合い方に注目です。

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いぬいはやと

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いぬいはやと

1993年生まれの編集者・ライター。ローカルを軸にした編集チーム『Huuuu』に所属し、外食、1次産業、移住などを中心に取材。趣味で酒場のメニューを収集しています。