新規の獲得コストはリピーターの5倍?(1:5の法則)

“マーケティング”と聞くと身構えてしまいますが、商品が売れる仕組みを作ることを指します。本連載ではマーケティングの代表的な法則や考え方をご紹介。すぐに活かせるものから、周りに教えたくなるようなものまで幅広くピックアップします。今回は「1:5の法則」をご紹介します。

1:5の法則とは

1:5の法則

1:5の法則とは「新規のお客様を獲得するには、リピーターのお客様を獲得する場合の5倍のコストがかかる」という法則です。これは、新規のお客様の5%を離脱させずリピーターにすることができれば、収益が25%とアップするという「5:25の法則」と共に、コンサルタント業界の第一人者と言われるフレデリック・F・ライクヘルドが提唱しました。

お店に1度でも来店されたことがあるお客様は、メニューの内容やスタッフの対応、お店の雰囲気などを知っています。そのため、お店の良さや利用するメリットをよりアピールすることで再来店してくれる可能性が高まります。

一方、新規のお客様はお店を全く知らないことがほとんどです。そのため、チラシを作ってポスティングしたり、SNSを使って情報発信をするなどしてお店の存在知ってもらい、一から魅力を伝えていく必要があります。

もう少しイメージしやすいよう、自分が全く知らないお店に初来店する際のプロセスから考えてみましょう。

初来店までのプロセス

新規のお客様が来店するまでの行動は、ローランド・ホールが提唱した「AIDMA理論」が有名です。

AIDMA理論とは、まずAttention(注意)があり、次にInterest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、と続いてAction(行動)になるという理論です。

例えば、おしゃれなカフェがあったとすると、

➀Attention(注意):外観や看板を見て「ここにカフェがあったんだ」と気付き
②Interest(興味):「おしゃれなカフェ」だなと興味を持ち
③Desire(欲求):「カフェ巡りが趣味の友達と一緒に来てみたいな」と思い
④Memory(記憶):「次、友達と休みが合ったときに来よう」と思い出し
⑤Action(行動):実際に来店する

という流れになります。

ただし、まだインターネットが発達していなかった時代はこの流れが主流でしたが、現在ではここに「お店のことを調べる(Search)」、「お店を評価、宣伝する(Share)」などの別の要素が加わった「AISAS理論」が主流となっています。

先ほどのカフェの例であれば、

➀Attention(注意):外観や看板を見て「ここにカフェがあったんだ」と気付き
②Interest(興味):「おしゃれなカフェ」だなと興味を持ち
③Search(調査):「どんなお店なのか、他の人はどんな評価をしているのか」を調べ
④Action(行動):良いお店だったら、友人と予定を合わせて来店し
⑤Share(拡散):SNSなどでお店のことを発信する

1:5の法則

という流れです。お店によっては、ここに予約やSNSなどで接点を持ち続けるなどの要素も加わります。

リピーターを獲得するアクションを行なう際は④Action(行動)から始めるのに対して、新規顧客を獲得する際は➀Attention(注意)から始め、④Action(行動)までのプロセスをすべてクリアする必要があります。ここからみても、新規顧客とリピーターを獲得するコストは大きく異なることがわかります。

じゃあ、リピーターの獲得だけを目指せばいいの?

1:5の法則をみると一見、新規顧客の獲得よりも、その1/5のコストで成立するリピーターの獲得に力をいれたほうがいいのでは?と思いがちですが、そうではありません。言うまでもなく、リピーターも元々は新規のお客様だからです。

つまり、新規顧客の獲得に力を入れずリピーターの獲得だけを目指してしまうと、お客様全体の母数はどんどん減ってしまい、結果的にお店の収益を出していくことが難しくなってしまうのです。

目先のコストに囚われず、中長期的に考えて安定した収益を得ていくためには、新規顧客の獲得とリピーターの獲得両方をバランスよく行なっていく必要があります。

では新規顧客を獲得するには、何をすれば良い?

新規顧客を獲得するには、お店の存在を知ってもらい、良さをしっかりアピールすることで、お客様に魅力的なお店だと思ってもらう必要があります。ここからは具体的な方法を3つご紹介していきます。

チラシのポスティングや看板でお店の存在をアピールする

チラシのポスティングは、お店の近隣にいるターゲットに対して最も直接的にお店の認知度を上げることができる集客方法です。製作や配布作業が必要ではありますが、クーポンのとりつけなど中身の工夫もしやすいメリットもあります。ポスティングを行なう場合は、ただ宣伝するだけではなく、きちんと興味を持ってもらえる内容にするためにも、配布するエリアやターゲットに沿ったコンテンツをしっかり組み立てていきましょう。

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ポスティングについてはこちらで詳しく紹介しています。
飲食店が行うポスティング。その効果や費用は?

看板もポスティングと同様、近隣にいるターゲットに対してお店の認知や魅力を伝えるために有効的な手段です。お店の前を一瞬通り過ぎる人が対象であるため、何を取り扱うお店なのかがぱっとみて分かるような文字、デザインを検討しましょう。

ブラックボードなどを使い、本日のおすすめやお店からのメッセージを載せて頻繁に更新していくこともおすすめです。こうすることで、最初はお店に興味を持っていなかった人も、何度か目にするうちに「今日はどんなコメントが書かれているかな?」と興味をつようになり、来店に繋げることが期待できます。

SNSや集客サービスを利用する

SNS

先述したように、現在では多くの人が事前にインターネットでお店のことを調べてから来店します。そのため、SNSや集客サービスなどを利用してお店を知ってもらうことも新規顧客の獲得には大切になってきます。

無料で使えるおすすめサービスは、GoogleマイビジネスとInstagramです。

Googleマイビジネスは、Google検索やGoogleマップなどGoogleのサービスにビジネスやお店などの情報を表示し、管理するためのツール。

お店を調べるところから予約、来店までの道案内、その後の評価やフォローまで様々な機能が存在しますが、その中でも特に活用してほしいのが口コミ機能です。口コミはお客様の生の声が反映される場として、来店を検討している新規のお客様によく参考にされています。この口コミを増やし、丁寧に返信していくことで、投稿したお客様に好感をもっていただくことはもちろん、それを見ている検討段階の方にもお店の対応が丁寧であることが伝わります。

GMB

Googleマイビジネスは、投稿を増やす&返信する

お店に来店したお客様には、積極的にGoogleマイビジネスへの口コミ投稿をお願いし、丁寧に返信を行なっていきましょう。

Googleマイビジネスについてはこちらでも詳しくご紹介しています。
【連載】飲食ネット集客 Googleマップ編

Instagramは、飲食店と相性の良いツールとされています。おいしそうな料理やお店の内装写真を統一感を持たせて投稿したり、開店時間やキャンペーンなどの最新情報をしっかり発信することで、お客様にお店の魅力を視覚的に伝えることができます。

またInstagramは、お客様の投稿がお店の宣伝になることも強みです。ハッシュタグの活用やタグ付けがされた投稿は、まだお店を知らないお客様がお店を知る大きなきっかけになります。

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Instaglam運用の工夫にはこちらの連載も参考にどうぞ。
【連載】飲食ネット集客 Instagram編

このほかにもWebサイトやTwitter、グルメサイトへの掲載なども一つの手段です。

話題作りを意識したメニュー作りを行う

話題を集めるようなメニューを作り、SNSやメディアに取り上げられることも新規顧客獲得に有効です。

例えば、大阪府高石市のカフェ・スイーツ店「All day dining hikari」では、イチゴをタワーのように盛り付けた「苺の山登りパフェ」が注目を集めました。

www.instagram.com

この見た目のインパクト、色合いのかわいらしさは多くのお客様やメディアから注目を浴び、「苺の山登りパフェ」をお目当てとした新規顧客獲得に大成功しています。

このように常に話題作りを意識したメニュー作りを行えば、SNSやメディアへの露出が自然と増え、お店の認知向上、そして新規顧客の獲得を期待することができます。

リピーター獲得も並行して行う

先述した通り、新規顧客の獲得とリピーターの獲得は並行して行なっていく必要があります。

特にリピーターは「新規のお客様の5%を離脱させずリピーターにすることができれば、収益が25%アップする」という法則が存在するほど、その獲得コストが低いだけではなく、収益に関しても大きなメリットをもたらしてくれる大切な存在です。

リピーターを獲得するためにできることについては、こちらで詳しくご紹介しています。
お客様の離れを5%改善=利益は25%アップするってほんと?(5:25の法則)

まとめ

1:5の法則

1:5の法則のとおり、新規顧客の獲得は必要不可欠ですがその分コストはかかってくるものです。限られたコストで狙っていくためにも、お店のターゲットがどんな人で、なんの施策が最も響くかを考え、より効果的な集客を行なっていけるようにしましょう。

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written by

FOOD-IN編集部

FOOD-IN編集部ライターが未来の飲食店をつくるための経営ノウハウをどのメディアより”分かりやすく”をモットーにお届けします。