やみくもに新メニューを追加してしまうと、どの商品の売れ行きがいいのか、利益率を確保できているか、全体を通してみてどんな傾向があるか、などをしっかりとした数字を見ずに自分だけの感覚に頼ることになります。メニューごとの販売実績や利益率を計算したうえで、どんなメニューを変えるべきか考えてみませんか?
前回の記事はこちら
新メニュー開発・リニューアルの手順、自己流になりすぎていませんか?
販売実績の分析ってなんでやるの?
どのお店も、人気・定番メニューや原価率が高い商品はある程度把握していると思いますが、すべてのラインナップの中で、どのメニューがお店にとってどんな役割を果たしているのか傾向を分析していますか?
たとえば、目玉メニューはインパクトを持たせるためにある程度利益をうすくして、それ以外のメニューでバランスを保っているお店もありますよね。 各メニューの「売上」と「粗利」を数字として洗い出して、感覚ではなく客観的なデータとして管理できると、経営の安定に向けたしっかりした施策を考えることができます。
このような結果を出すために作業を進めます
お店のメニューの「売上」「粗利」の2つで各商品を計算すると、お店への貢献度がわかります。

これが作れると、貢献度の高いメニューは継続、粗利は取れているが売上がもう一歩のメニューはアピールの方法を考える、売上はあるが粗利の低いメニューは原価の調整を検討、どちらにも貢献できていないメニューはけずる、などメニューごとの対策を打ち出すための情報整理ができるようになります。
ここでは計算のためにGoogleスプレッドシートを使いますが、記事最下部からダウンロードして本記事の手順のとおりに項目を埋めていけば結果がわかるようにつくっています。 GoogleスプレッドシートはGmailのアカウントをお持ちであれば誰でも無料で使うことができます。なお、エクセルをお持ちの方はダウンロードすれば同じ手順でお使いいただけます。
慣れている方はやりやすい方法で
本記事では、Googleスプレッドシートに慣れていない方向けに、ショートカットキーなどは最低限で説明します。慣れている方は、手順さえ同じであれば問題ありませんのでお好きな操作方法で作業してくださいね。
早速チャレンジしてみましょう!
用意するもの
・PC
・メニュー一覧
・販売価格一覧
・商品原価一覧
※タブレットでもできますが、紹介する操作方法とやや異なる部分があります
ダウンロードしたファイルを開く
ファイルを開き、画面右上「ファイル」→「コピーを作成」を選択してください。 すると、ご自分のPCに専用のシートが作られます。ここから作業をはじめましょう。
このとき、エクセルで作業を行いたい方は「ファイル」→「ダウンロード」→「Microsoft Excel(.xlsx)」を選んでください。
完成イメージを見る

シートを開くと、まず完成イメージが表示されています。 右の方にスクロールしていくと「コメント」という列があり、それぞれのメニューの状況が記載してあります。さきほどの「売上」「粗利」の図にあてはめた結果がこちらに書いてあります。
表にあてはめると以下の通り。
各メニューが売上・粗利それぞれに対してどのくらいの割合かを計算して結果を求めています。 実際に入力していただくのは販売価格と商品原価、月間販売個数のみで、あとは自動で計算されるようになっていますのでご安心ください。
本記事では「まずざっくり状況を把握する」ことを目的としますので、むずかしい言葉や専門用語はできるだけ使いません。 ただ、本当は計算方法自体やそこで使われる一般的な表現も知っていただきたいので、別の記事であらためてご紹介しますね。
イメージをつかめたら作業へ
シートの下に「こちらをお使いください」と書いてあるタブがありますので選択してください。このタブで作業を進めていただきます。
計算式が入っているところもあるので、説明手順以外のところは編集しないようご注意を。もし触ってしまったら、画面左上の矢印マークを1回押すと「1つ前に戻す」こともできますので、万が一なにかあったらご活用ください。
お手元のメニュー情報を入力
まず、「商品名」と書いてある列に、1行につき1メニューずつ入力してください。 次にそれぞれのメニューの販売価格、原価、月間販売個数を埋めていきましょう。
月間販売個数は、手元にあるうち一番新しい月のものを使ってください。
数字は半角で入力してください。また、「円」などの単位は不要です
余った行を削除する
すべて入力を終えたら、不要な行を削除します。 下の図のように、なにも入力していない一番上の行(=商品を入力し終えた1つ下の行)の数字をクリックしたら、「Shift」ボタンを押しながら「↓(下向きの矢印)」を押すと複数の行をまとめて選択できますので、一番下の行まで選んだら「delete」ボタンで削除します。
空白の行自体は残りますが、計算には支障ないので先に進みましょう。
売上評価をつくる
まず、F列「月間売上」を金額が高い順に並べ替えます。「月間売上」の右手「▼」を押し、「Z→Aに並べ替え」てください。
次に、L列「売上評価」に高中低いずれかのテキストが入っている行をすべて選択します。具体的には、一番上の「高」セルを一度クリックしたら、先ほど行をまとめて削除した時と同じように「Shift」ボタンを押しながら「↓(下向きの矢印)」を押して一番下の「低」まで選択します。
その状態のまま、画面右上「編集」から「コピー」をクリックしてください。 そして、もう一度「編集」を押し、「特殊貼り付け」の中にある「値のみ貼り付け」を選びましょう。
これで「売上評価」の完成です。
粗利評価をつくる
同じ手順で粗利評価を作成します。
まず、G列「月間粗利額」を金額が高い順に並べ替えます。「月間粗利額」の右手「▼」を押し、「Z→Aに並べ替え」てください。
次に、M列「粗利評価」に高中低いずれかのテキストが入っている行をすべて選択します。先ほど同様、一番上の「高」セルを一度クリックしたら、「Shift」ボタンを押しながら「↓(下向きの矢印)」を押して一番下の「低」まで選択します。
その状態のまま、画面右上「編集」から「コピー」をクリックしてください。 そして、もう一度「編集」を押し、「特殊貼り付け」の中にある「値のみ貼り付け」を選びましょう。
これで「粗利評価」の完成です。
分類とコメントを確認する
ここまでできたら、O列「分類」とP列「コメント」にそれぞれ結果が表示されます。 特に赤字になっているものは、売上・粗利ともに低く、改善を検討すべきメニューになります。
ここで、先ほどの表を見直してみましょう。
売上と粗利の評価ごとに、9つの枠に分類されています(数字の隣のアルファベットは、現時点では気にしなくて大丈夫です)。
9にあたるのが、シートで赤字になっているメニューです。
表のかたちを変えて見てみましょう。
番号 | 売上評価 | 粗利評価 | コメント |
---|---|---|---|
1 | 高 | 高 | 売上・利益ともに貢献度が高い良いメニュー |
2 | 高 | 中 | 貢献度は高く粗利は中。原価調整できればもっと貢献度が上がる |
3 | 高 | 低 | 原価が高いが売れているので目的にあっていればOK |
4 | 中 | 高 | もう少し売上を伸ばせば優良メニューに |
5 | 中 | 中 | 中間。4同様売上をもっと伸ばすための工夫が必要 |
6 | 中 | 低 | 原価が高く売上も中。お得商品としてアピールか原価を下げるか検討 |
7 | 低 | 高 | 売上は低いが粗利が高いのでもっと目立たせたい |
8 | 低 | 中 | 売れてないが粗利は中。見せ方を再検討して販売数を伸ばす |
9 | 低 | 低 | 売れておらず粗利も低い。撤退・メニュー変更も考えるべき |
9以外も、メニューでの見せ方やお客様へのおすすめをすることで売上を伸ばせばよりよくなるもの、原価調整することで貢献度が上がるものなど改善の糸口を見つけることができます。
あえて高い原価率で目玉商品として打ち出しているメニューの場合は、売上評価が高くなっているか確認しましょう。低い場合は撤退も視野に入れつつ、改善案を考える必要があります。
あなたは「ABC分析」なるものができるようになりました🎉
さて、ここまでたどりついたあなた。まずはおつかれさまでした!
ご紹介した販売実績の分析方法は、一般的に「ABC分析」や「重点分析」と呼ばれるマーケティング分析の手法のひとつです。ことば自体は聞いたことがある方も多いかもしれません。
今回は売上・粗利の評価を「高中低」で表しましたが、ABC分析の場合、本来は「ABC」を用います。 1〜9の横に書いた2文字のアルファベットは、ABC分析に当てはめた際の評価です。
この分析方法では、シートで自動で計算されているJ列「売上累計構成比」「粗利累計構成比」という、お店の売上・粗利に対してそれぞれのメニューが何割を占めるかの値を割り出して算出します。
どういう手順を踏んで結果を出したかについては別の記事であらためてしっかりご説明するとして、広く使われる代表的な方法でお店のメニューを分析できるようになったということをまずご認識いただければと思います。
大切なのはデータを分析したあとのアクション!
分析の方法はここまでですが、本当に大切なのは、算出したデータの結果をもとに「どのメニューをどう改善していくか」をお店の状況にあわせて考え、行動にうつしていくことです。当メディアFOOD-INでは、ヒントになる記事をたくさん発信しています。ぜひ他の記事もチェックしてみてくださいね。
シートのダウンロードがまだお済みでない方は、以下からどうぞ。
今回はここまで。
次回は「売れる居酒屋メニューって?商圏に合わせたメニューの考案方法」をご紹介します。
【連載】売れるメニューのつくりかた
第1回 新メニュー開発・リニューアルの手順、自己流になりすぎていませんか?
第3回 売れる居酒屋メニューって?商圏に合わせたメニューの考案方法
第4回 飲食店の専門店化。メリットや注意点、メニュー作りのポイントを解説!