適切な座席案内とは?「パーソナルスペース」を守るだけでお店の居心地アップするかも。

心理学を知ることで、お店を繁盛させ、売り上げアップヒントが見つかるかも。本連載では、飲食店が明日からお客様に使える心理学について解説していきます。どんな飲食店も、すぐ参考にできるものばかりなのでぜひ実践してみてください。

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飲食店では座席案内が重要!

お店が空いてるときは奥から詰めてご案内するべき…?それとも離したほうがいい…?

お客様をどの席に案内するかはその時々で判断に悩んでしまうときもありますよね。今回の記事はお客様に好印象を与えるための適切な座席案内についてです。座席案内の仕方によって、お客様にとっての「居心地のよさ」に対する評価は大きく左右されます。

電車内を想像すると分かりやすいのですが、あなたが一番端の席に座っていたとします。電車は空いていて他にも空席があるのに、わざわざ自分の隣に詰めて座ってくる人がいたらちょっと嫌じゃないですか?

見知らぬ人であれば、離れて座りたいというのが普通の感覚です。

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他人との距離が近過ぎると不快。

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他人との距離は程よく離れていたほうが居心地がいい。

これは「パーソナルスペース」が関係しています。「個人空間」という意味で、自分の周りには目に見えない空間があり、その中に他人が入ってくると不快感や嫌悪感を覚える心理的な縄張りを表す心理学用語です。個人差はあるのですが、だいたい自分の周囲45cm以内に家族、友人など親しい人以外に接近されると嫌悪感を感じると言われています。ちなみに「ソーシャルディスタンス」もこのパーソナルスペースのひとつ。

類型 対人距離 距離の意味合い
密接距離:intimate distance 0-45 cm …相手の体温や匂いが分かり、抱きしめられる距離。 家族・恋人などのごく親しい人に許される空間。
個体距離:personal distance 45-120 cm…手を伸ばせば相手を捕まえられる距離。 親しい友人など。相手の表情が読み取れる空間。
社会距離:social distance 1.2-3.6 m……知らない人同士が会話をしたり、商談をする場合に用いられる距離。 相手に手は届きづらいが、容易に会話ができる空間。
公共距離:public distance 3.6m以上…2者の関係が個人的なものではなく、講演者と聴衆と言うような場合の距離。 複数の相手が見渡せる空間。

一般的に、客単価の高い高級レストランは、かなりゆったりとした席配置になっていることが多いですよね。他の客を気にすることなく、料理や一緒に来ている人との会話に集中して楽しむことができます。

一方で、客単価の低い、最近ブームの立ち飲み屋などでは隣客とヒジが当たるくらい距離が近い店もありますよね。お互いのパーソナルスペースを侵略しあうことで、初対面でも親近感が湧きやすい状況が生まれます。他人であるはずの隣客と会話が弾んだり、店主が「ちょっとそこ詰めてもらえます?」など、お客様が積極的に協力しているような店はこういった一体感を楽しんでいるといえるでしょう。

こういった「あえて広く、あえて狭く」というコンセプトではない店舗では、基本的なお客様のパーソナルスペースが保たれるように座席を配置し、お客様同士が近くならないように案内をするのがセオリーです。

コロナによっていつも以上にパーソナルスペースにセンシティブになっているお客様も多いです。しかし、適切なタイミングに、適切な順序で、適切な場所へ案内する――これは、簡単そうに見えて、案外難しいことなのです。

席案内のセオリーを徹底しよう

スタッフを教育するマネージャーの立場の人でも、座席案内は属人的になりがちで個々の経験則によって行われることが多いもの。しかし、“なんとなく”の感覚で空いた席へ案内していると、お客様の不満のもとになってしまうため、お店としての方針をマニュアル化して各スタッフが効率よく動けるように指導することが大切です。

ヒント1 「奥から順番に案内」は間違い

ありがちなのが、自分の仕事がしやすいからと言って、奥から詰めるように順番に案内してしまうパターン。先ほどの電車内の例のように「空いているのに距離が近い」という状況は居心地の悪さを感じさせてしまう要因になります。店内が空いている場合は、ある程度お客様同士の間隔を開けて案内することを心がけましょう。奥に案内したら次は手前、その次に真ん中、というように、できるだけお客様が窮屈に感じないような配慮が大切です。

(奥は埋まってるから…)手前の席へどうぞ。

ヒント2 「適切な席」に案内する

その場に応じて適切な席に案内することも大切です。例えば、店内が空いているときは2人組でも4人席に通すのがセオリー。お客様にゆったりと過ごしていただけて、結果として満足度が上がります。しかし、例えば来店時は空いていたとしても、30分後ピークタイムで満席が予想される場合、4人席が空いていても2人席に通したほうがいい場合もあります。その場合はお客様に一声添えて案内するなどの気遣いを忘れないようにしましょう。

恐れ入りますが、2名席でもよろしいでしょうか。

ヒント3 案内する順番をルール化しておく

例えば、カウンター席が飛び飛びで空いた場合、複数人のお客様をどのような順番で案内するか、という事例では、以下の2パターンの案内方法が考えられます。

1.カウンターのお客様にお声掛けをし、詰めていただく。
2.空いたままお客様に待っていただく。

みなさんのお店ではどのような対応をされているでしょうか。こうした場合に、スタッフによって対応が異なると混乱やクレームのもとになります。お店によって案内する順番のルールをあらかじめ決めておくことでこうしたケースが起きたときにもスムーズに対応することができます。

座席案内でもお店の印象が変わる!

スタッフがルールに従って案内すれば、 適切なパーソナルスペースが保たれ、お客様の満足度も上がります。また居心地よく利用していただくことがお客様のリピート率にも大きく影響します。スタッフ同士で意識し合うことが大切です。

今回はここまで。

次回は常連のお客様の育て方とは?ステージにあわせた対応でお客様をお店のファンに!をご紹介します。

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written by

FOOD-IN編集部

FOOD-IN編集部ライターが未来の飲食店をつくるための経営ノウハウをどのメディアより”分かりやすく”をモットーにお届けします。