飲食業の税務調査で必ずつっこまれる急所とは?対応策を解説!

飲食店だけでなく、会社にはときどき「税務調査」が入ります。漠然と怖いイメージがありますが、正しく税金を納め、ポイントを押さえた帳簿があれば特に問題になることはありません。この記事では飲食店の税務調査でつっこまれる急所と対応策についてご紹介します。

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税務調査とは?

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税務調査とは、正しく納税をしているかを税務署などが調べることです。国税庁の資料*によると、税務調査とは「申告内容が正しいかどうかを帳簿などで確認し、申告内容に誤りが認められた場合や、申告する義務がありながら申告していなかったことが判明した場合には、是正を求めるもの」としています。

飲食店の場合、

・消費税(開業から2年間、または1,000万円を超えない場合は基本的に免除される)
・印紙税
・固定資産税(土地や建物を所有している場合)
・源泉所得税・特別徴収住民税(従業員を雇っている場合)

といった税金がかかります。

また上記のほかに、以下のような税金を支払わなければなりません。支払う税金は、個人事業主か法人かで違います。

個人事業の場合 法人の場合
所得税
個人住民税
個人事業税
復興特別所得税
法人税
地方法人税
法人住民税
法人事業税

法人の場合でも代表者個人には、所得税、個人住民税、復興特別所得税の支払い義務があります。税務調査は、これらの税金を正しく納めているかを調査するものです。

税務調査と聞くと怖いイメージがあるかもしれませんが、きちんと税金の計算をして正しく納税していれば、何も怖いことはありません。また一般的には事前に通知があり、もし正当な理由があって調査の日程を変更したい場合には、協議することも可能です。

税務調査の実態

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税務調査は、先述したようにいつ、どこに、何の税を対象に調査に行くのかという事前通知があります。しかし、飲食業界は不正発見の割合が高く、事前通知なしで調査に来ることも多いです。実際、国税庁が発表している「平成29事務年度 法人税等の調査事績の概要」(※)によると、不正発見割合の高い10業種(法人税)には、外国料理が2位、大衆酒場・小料理が3位、その他の飲食が4位と、飲食店が多くランクインしています。こうした飲食店に証拠を隠滅されないよう、無通知で来ることがあるようです。

税務調査では、基本的に帳簿を見られます。その際に調査官から質問をされることがあるため、はっきりと答えられるようにしておきましょう。場合によっては、帳簿を預かることもあります。なお、調査官には質問検査権があり、もし正当な理由なく答えるのを拒否したり、嘘を言ったりした場合、罰則があるので注意しましょう。

何も問題がないと判断されたら、後日、その旨の通知が届きます。もし修正すべき点があった場合には、それを修正して追納します。これで税務調査は終了です。

ちなみに、このようにお店の了解を得てから行う税務調査を「任意調査」と言います。基本的には事前通知がありますが、飲食店のように現金管理が必要なものに対しては事前通知なしで訪れる「無予告調査」を行うこともあります。 対して、悪質な脱税行為や脱税の額が1億を超える大きな案件には、国税局が直接調査に入ります。これを「強制調査」と言います。強制調査は裁判所から令状が出て行われる調査のため、拒否することはできません。

もしいきなり税務署の調査員がきたら?

では、いきなり税務署の調査員が来た場合には、どうすれば良いのでしょうか?

強制調査であれば拒否することはできませんが、小さな飲食店の場合は任意調査が一般的です。そして任意調査は、あくまで任意なので、お店の了解を得ないと行うことができないとされています。 しかし先述したように、調査官には質問検査権があるため、基本的には任意調査でも断ることはできません。かと言って、お店側にもお客様の対応や開店前の準備などがあります。急に来られて、いきなり調査すると言われても困りますよね。

そこで、もし調査官がやってきたら、以下のような対応をしましょう。

お店や自宅の中に入れない

調査官がやってきたときには、お店や自宅の中に入れないこと。中に入れてしまうと、余計なものを見られてトラブルになる可能性があります。何を言われても「税理士に連絡をする」と答え、外で待っていてもらいましょう。税理士と連絡がついたら、あとは任せて問題ありません。

日を改めてほしいを伝える

もし税理士と連絡がとれなかったら、今日は時間がとれないので日を改めてほしいと伝えましょう。その上で、いつなら調査に応じられると提案します。別日を提示することで、税務調査を逃れたいわけではないことが伝わります。

税務調査にかかる日数は?

東京税理士会の2019年度税務調査アンケートによると、税務調査にかかった日数は、1日が20.1%、2日49.4%と、およそ7割が1日~2日かかっています。大きな法人になれば、もっとかかる場合もあるようです。

おそらく調査官は「営業の邪魔にならないようにする」と、さまざまな方法で交渉してくるでしょう。しかし、務調査は、1~2日程度かかります。これだけの日数をお店に影響なく確保するのは、事前に分かっていなければ厳しいですよね。それは調査官も理解してくれるはずです。 「今日は難しいが、○日であれば時間を確保できる」と提案すれば、調査官も無理やり調査をしようとはしないでしょう。

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税務署の調査員はどこを見る?

税務調査で見られるのは、主に以下の6つです。

1.売上

売上はお店の利益に最もかかわる部分のため、調査官も重視しているところです。売上が少なく申告されていないかはもちろん、計上ミスがないかもチェックされます。特に現金管理がきちんとしていないと「売上を少なく申告しているのでは?」と疑われるため、現金管理は普段からきちんとしておきましょう。

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飲食店の現金管理、しっかりできてますか?

また、気をつけておきたいのは「期ずれ」。期ずれとは、サービスや商品を提供した期と、それに対する入金が違う期である場合に発生するものです。

例えば、12月が決算月の飲食店で、12月に行われた忘年会の費用が1月にまとめて入金されたとします。通常、売上は入金があったときではなく、サービスを提供したときに計上するため、この忘年会の売上は12月分として計上しなければなりません。しかし、誤って入金のあった1月に計上してしまうことがあります。これが、期ずれです。飲食店は、基本的に料理を提供した日に現金で決済することがほとんどでしょう。しかし、クレジットカード決済などのキャッシュレスを導入している場合には期ずれが発生する可能性があるため、注意が必要です。

2.仕入

仕入も基本的には売上と同じで、商品の引き渡しがあった月に計上します。一部前金などで払っていた場合にも、あくまで計上は商品引き渡しの月です。例えば、12月に前金を支払って、1月に商品を納入。残金を1月に支払った場合、前金も残金もすべて1月に計上します。 仕入でチェックされるのは「先取り」です。つまり先述した例の前金を、前年に含めていないかということです。前年に含めて申告していた場合、その分前年の利益が少なくなるため、修正が必要となります。

3.棚卸資産(在庫)

税務調査では、在庫と購入費用がチェックされます。理由は、利益を減らすために来期の材料まで購入していないかを調べるためです。 飲食店は、期末の経費調整がしやすい業種です。利益が多いとその分税金がかかるため、来期に使う分の材料を期末に購入して、今期の経費に充てることができてしまいます。 しかし、実際に経費に計上できるのは、今期に使用した材料のみです。そのため、来期に使用するために使った費用を今期分として計上していないかチェックします。

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4.外注費

外注費で特に重視される点は「架空請求がないか」「給与にならないか」の2点です。 調査官は、外注費や業務委託費の金額よりも中身を見ます。架空請求だと思われないよう、先方からの請求書などはきちんと保管しておきましょう。 また外注費は、場合によっては給与と見なされることがあります。この場合、源泉徴収や消費税も絡んでくるため、外注費や業務委託費は給与と見なされないようにすることが大切です。具体的には「拘束時間ではなく、作業の内容に報酬が支払われる」「報酬を支払う条件は完成品の引き渡し」「作業に必要な道具などを作業者が負担している」などであれば、外注費と見なされます。

5.人件費

人件費も売上と同じく細かくチェックされます。架空の人件費を支払っていないか、水増しをしていないか、源泉徴収はされているかなど、チェックするポイントも多いです。 家族がお店を手伝っている場合には、条件を満たすことで青色事業専従者給与、もしくは事業専従者控除が認められる場合がありますが、この条件を満たしているか、また本当に従事している実態があるのかも調べられます。

6.交際費

交際費は、私的なものが含まれていないかがチェックポイント。交際費は、取引先との接待やお歳暮、お中元といった「業務を円滑にするための交際」で必要とされる費用のことです。いつ、どこで、誰のために使ったのかなどを詳細に記載し、すぐに説明できるようにしておきましょう。

税務調査は怖くない!

税務調査は普段の管理をしっかりとしておけば、決して怖いものではありません。上記の点を準備し、急な税務調査にも慌てず対応できるようにしましょう。

今回はここまで。

次回は従業員の食事やまかないにも税金がかかる場合も。やるべき税務処理方法は?をご紹介します。

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written by

FOOD-IN編集部

FOOD-IN編集部ライターが未来の飲食店をつくるための経営ノウハウをどのメディアより”分かりやすく”をモットーにお届けします。