飲食DXの成功事例8選!飲食店がDXに取り組むメリットも解説

人手不足・経営コストの上昇・食文化の多様化など、飲食業界を取り巻く様々な課題に対し、打開策として注目をあつめる「飲食DX」。

本記事では、「飲食DX」に取り組むメリットと、国内飲食企業が取り組む「飲食DX」の成功事例を8つご紹介します。

「飲食DX」に取り組むメリットとは

飲食企業が「飲食DX」に取り組むメリットは以下3つです。

・店舗業務の効率化
・データを活用した店舗改善
・顧客体験価値の向上

例えば、飲食企業が「飲食DX」の一環としてテイクアウトのモバイルオーダーシステムを導入すると、スタッフの注文受付業務と会計業務が効率化し、効率化した分は、人件費の削減や他業務に活かすことができます。

注文情報と紐ついた顧客情報が取得できる店外向けモバイルオーダーシステムの場合は、取得したデータから顧客のニーズを割り出し、メニュー開発や運営などの店舗改善に役立てることが可能です。

さらに顧客にとってもメリットは多く、レジに並ばずに注文と決済ができて、店舗での待ち時間なく商品を受け取れ、店舗全体の顧客体験価値の向上につなげることができます。

「飲食DX」に取り組むメリットとは、ツール導入による店舗業務の効率化だけでなく、蓄積されたデータの分析から課題を発見し、店舗を改善していくこと、そして顧客体験価値を高めて利益向上を目指せる点にあると言えます。

「飲食DX」についてはこちらでも

飲食DXとは?飲食企業のDX担当者が知っておきたいポイントを解説

「飲食DX」成功事例8選

「飲食DX」に取り組む飲食企業の成功事例を8つご紹介します。

成功事例①株式会社物語コーポレーション(焼肉きんぐ)

株式会社物語コーポレーションが運営する焼肉店「焼肉きんぐ」は、配膳ロボットや注文タブレット、順番待ちシステム、AI予約受付システムなどあらゆる飲食DXツールを活用し、顧客満足度の向上と付加価値の創出に力を入れています。

株式会社物語コーポレーションの飲食DX推進は、業務効率化から生まれる時間を「サービスの質」の向上に充てることが目的のひとつ。

焼肉きんぐでは、配膳ロボットやタブレットで生まれた時間を、「おせっかいサービス」と呼ぶスタッフが肉の焼き方や食べ頃を伝えてまわる積極的な接客時間に活用しています。

顧客体験を重視するからこそ、人である必要がない業務は機械に、人の温かみや優しさが必要な業務はスタッフが丁寧に対応する。 そんな店舗運営を実現させています。

飲食DXの推進により顧客体験価値の向上に取り組んだ結果、同社「焼肉部門」の客数は前年対比で2022年4月が118.0%、2022年5月が131.5%の伸び。
売上高も比例して、2022年4月が120.8%、2022年5月が138.1%の伸びをみせています。
※2022年6月発表「月次売上高前期比(速報値)」より

成功事例②ロイヤルホールディングス株式会社(ロイヤルホスト)

GATHERING TABLE PANTRY

「ロイヤルホスト」「てんや」を手がけるロイヤルホールディングス株式会社では、コロナ禍以前より飲食DXの推進に取り組んでおり、2017年には飲食DXツールを活用する実証実験店舗として「GATHERING TABLE PANTRY」をオープンしました。

「GATHERING TABLE PANTRY」は、顧客の料理注文から決済まで一つのiPadで完結するオペレーションを確立し、顧客のメリットを高めると同時に、注文受付・会計業務が発生しない店舗運営を実現。
その他、家電メーカーと共同研究した​​調理システムの導入や清掃ロボットの導入など、あらゆる飲食DXツールを活用した実証実験を数年にわたり実行してきました。

「GATHERING TABLE PANTRY」は現在閉店していますが、同店で検証した各ツールの検証結果は、「ロイヤルホスト」「てんや」などメインブランドにおけるシステムの本導入と運用に活かされています。

成功事例③株式会社リンガーハット(リンガーハット)の成功事例

株式会社リンガーハットが運営する「長崎ちゃんぽん リンガーハット」は、過去の売上データから店舗ごとの売上を予測するAIシステムと、予測された売上高をもとに食材発注量を算出する発注システムを全店舗に導入しています。

AIをシステムが行った売上と発注量の予測は、スタッフの発注業務効率化や人件費削減だけでなく、食品ロス防止と在庫の最適化にも効果がみられたといいます。

2022年秋にはAIシステムの予測精度向上を予定しており、今後ますますの活躍が期待されています。

AIシステム・発注システムのような「飲食DX」の推進について、株式会社リンガーハットは、発注業務や人員管理を効率化し、作業に追われていた従業員の調理と接客の時間確保から顧客満足度の向上につなげていきたい考えを提示しています。

すでにクラウド型ECプラットフォームの導入によるECサイトのリニューアル、マニュアル作成・共有機能も搭載された人材育成システムの導入を完了しているほか、2022年はAIシステム改修の他にも、シフト管理のシステム化なども検討しています。

成功事例④株式会社サンマルクホールディングス(サンマルクカフェ)

トラットリア ケナル

株式会社サンマルクホールディングスは、飲食DXの目的を集客強化・業務効率化としており、2021年1月には飲食DXの実証実験や効果検証を行う新会社「株式会社サンマルクイノベーションズ」を設立しました。

同社の最新の取り組み先は、2022年3月にOPENさせたサステナブル・レストラン「トラットリア ケナル」。トラットリア ケナルではタブレットを活用した飲食DXに取り組んでいます。

メニューブックのようUIで注文可能なタブレットを導入し顧客の利便性を高めているほか、厨房内4か所に設置されたキッチンタブレットでは、様々な経路から入ったオーダーに対し、レシピや画像による仕上がりイメージを調理ポジションごとに表示することで、キッチンスタッフの生産性向上に繋げています。

一方で株式会社サンマルクホールディングスのメインブランド「サンマルクカフェ」では、飲食店の集客ツールとしてかかせないGoogleマイビジネス(Googleビジネスプロフィール)の一括管理システムを導入。

Googleマップ上の複数の店舗情報を一括更新・データの比較・改ざん防止・クチコミ管理・順位計測・分析を簡単に行うことが可能となり、サンマルクカフェ全体の集客増加施策に活用されています。

成功事例⑤株式会社すかいらーくホールディングス(ガスト)

すかいらーくホールディングスが導入している配膳ロボット

「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」などのファミリーレストランを展開する株式会社すかいらーくホールディングスは、ビジネスモデルのひとつにDXを掲げ、成長ストーリーにおける主要戦略として全社的に力を入れている飲食企業です。

すでに配膳ロボットの導入やモバイルオーダー、キャッシュレス決済種別の増枠など、様々な手法で飲食DXを推進しており、2022年中には、配膳ロボット約3,000台の導入、全店でPOSの刷新、キャッシュレスレジの導入、操作性を改善したデジタルメニューブック刷新の完了を予定しています。 ※2021年すかいらーくグループ 総合報告書より

取得したデータの活用にも積極的で、自社サプライチェーン、メニュー開発、人財開発、店舗開発における効率化と精度向上に役立てているほか、顧客マーケティング高度化の視点からは、顧客ごと最適化したアプローチの実現を試みています。

成功事例⑥株式会社グリーンハウスフーズ(とんかつ新宿さぼてん)

株式会社グリーンハウスフーズが運営する「とんかつ新宿さぼてん」では、顧客満足度やスタッフのモチベーション向上を目的に、顧客やスタッフの笑顔を画像解析し「喜び」を数値化するAIカメラを一部店舗に設置しました。

AIカメラによって、喜び数値が高い店舗や数値が上がる日時、数値が高い店舗はリピート率が高いなどの傾向が分かると、次ステップに数値が高い時間帯に店舗の様子を視察。 すると、優良店舗ではお客様に寄り添った高レベルな接客をしているという結果が明らかになりました。

スタッフの笑顔と顧客満足度・売上が相関関係にあると分かった同社では、優良店舗で働くスタッフに結果を伝えてモチベーションを向上させるとともに、同店の高レベルな接客を動画で事例化し、他店舗の接客スキル向上にも役立てています。

成功事例⑦株式会社ゼンショーホールディングス(すき家)

「すき家」「なか卯」を手がける株式会社ゼンショーホールディングスは、2007年頃からデジタル化を推進しており、2021年10月には国が定める「DX認定事業者」に認定されています。

株式会社ゼンショーホールディングスが掲げるDX推進の目的は「お客様の利便性の追求」「環境変化への迅速な対応」「グループ業態総合化対応」「生産性の向上」の4つ。 各目的に対しては以下のような施策を実施しています。

・お客様の利便性の追求:キャッシュレスPOS、モバイルオーダーの導入 等
・環境変化への迅速な対応:マルチチャネル対応(テイクアウト・デリバリーシステムの導入、ドライブスルー対応) 等
・グループ業態総合化対応:総合ITシステムの導入、クラウド活用 等
・生産性向上:AIやIoTシステム、チャットボットの活用 等

2022年に発表された中期経営計画では、DX推進による新規出店と生産性改善を目的として1700億円強の投資を提言しており、今後ますますDXを推進していくとみられています。

成功事例⑧株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングス(磯丸水産)

「磯丸水産」や「しゃぶ菜」を手がける株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスは、2021年にソフトバンク株式会社とパートナー契約を結び、様々な飲食DXを推進中。

ソフトバンク社が持つデータやAI技術を活用し、各店舗のワークスケジュールや食材発注の正確性・業務効率を高めているほか、店内向けモバイルオーダーシステムの導入や配膳ロボットの導入等により、店舗の省人化や顧客のメリット向上に取り組んでいます。

株式会社クリエイト・レストランツ・ホールディングスのDX推進は、店舗のみならず本部管理業務においても進められており、検品や検数におけるペーパーレス化・帳票記入などのシステム化なども積極的に行なっています。

まとめ:「飲食DX」の成功事例を参考に、自社に適したDXを進めましょう

飲食DXのメリット解説と、成功事例をご紹介しました。

飲食店DXの進め方は様々ですが、優先着手すべき分野や手法は飲食企業ごと、さらには対象店舗ごとに異なります。

ご紹介した成功事例を参考に、自社の課題がどこにあって、何を目的に進めるかを明確にしたうえで、最適な飲食DXを進めていきましょう。

O:der Tablenバナー


>>>こちらも読まれています
徹底的にお客様のニーズに応えたい。「吉野家」が2019年から着手したモバイルオーダーへの本気
「DX推進プロジェクト」の名の下、コロナ禍に一斉導入。うどんのお持ち帰りをデジタルが後押し
飲食DXとは?飲食企業のDX担当者が知っておきたいポイントを解説
モバイルオーダーとは?導入するメリット・デメリットを店舗、お客様側視点で解説!
モバイルオーダー13個のメリット!飲食店が今モバイルオーダーを導入する理由とは?

written by

FOOD-IN編集部

FOOD-IN編集部ライターが未来の飲食店をつくるための経営ノウハウをどのメディアより”分かりやすく”をモットーにお届けします。