いまこそ衛生。ウィズコロナ時代の衛生管理、基本はHACCP!

コロナ対策が必須となった今、多くの飲食店は衛生管理に力を入れています。しかし、忘れてはいけないのが異物混入や食中毒といった飲食店がもともと抱えているリスクへの対策。HACCP義務化もスタートした今こそ、衛生管理方法をおさらいし、ウィズコロナ時代においてもお客様から支持されるお店作りを行いましょう。

飲食店へのクレームで一番多いのが異物混入

東京都福祉保健局の発表によると、平成30年度に東京都の保健所等へ報告された食品衛生に関する苦情処理件数は合計5,034件。店舗の「施設・設備」628件、「食品・器具の取り扱い」614件、「異味・異臭」215件、「カビの発生」77件が上位にランクインしていますが、中でも863件と多かったのが「異物混入」です。

表
注1 苦情要因が複数ある事例は、それぞれの項目に計上
注2 構成比は四捨五入しているため、合計と一致しない場合がある

どんな異物が混入していたのかというと、虫類をはじめ、ガラスや金属片、体毛や頭髪など、実に幅広いものが検出されています。お客様に謝罪し、納得していただければまだしも、対応が悪ければ火に油を注ぐことになり、SNSなどで拡散されてしまうリスクもあります。 コロナ禍で、衛生管理に対してお客様の目が厳しくなっている今こそ、しっかりとした対策が必要です。

飲食店の新ルール「HACCP」に基づいた衛生管理をしよう

このように聞くと、普段の業務に加えてこれまで以上に衛生管理をしなくてはと負担に感じてしまう飲食店の方もいらっしゃるのでは。そんな方にぜひ取り入れていただきたいのが、2021年6月1日からすべての食品事業者に義務づけられることになった衛生管理の新ルール「HACCP」です。

そもそもHACCPって何なの?

「HACCP」とは、「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略称で、「食品衛生法」が改正されることにともない、2021年6月1日より食品等事業者に原則的に義務づけられることになった衛生管理手法のことです。簡単にいうと「店舗での原材料などの受け入れから販売までの作業を全て明らかにし、主な作業とその実施結果も記録として残す」というものです。

HACCPの義務化により飲食店が対処すべきこと

HACCPの義務化にともない、具体的には以下のような対応を飲食店は求められます。

  • 調理場での作業をいつどのように行うのか計画を立て、スタッフにも知らせる。 (必要に応じて、清掃・洗浄・消毒や食品の取扱いなど衛生管理の具体的な方法を定めた手順書を作成する。 )

  • 計画にしたがって、日々の衛生管理をしっかりと実行する。

  • 実行の結果を定期的にチェックし、必要に応じて内容を見直す。

具体的な対応方法などはこちら「対応必須らしいHACCP(ハサップ)…どうすればいいの? - FOOD-IN(フーディン)〜未来のレストランをつくる〜」をご参照ください。

HACCPの義務化による5つのメリット

書類を作成するのは手間がかかるなあ

計画を立てた後も、チェックし続けなきゃいけないのか…

たしかに、HACCPの義務化によって飲食店はさまざまな対応が求められることとなりました。しかし、実はそれ以上にメリットもあります。

  • 衛生意識の向上
    衛生管理の方法を「見える化」する過程で、スタッフ全員が知識を深め、衛生管理に対する意識が高まる

  • 生産効率の向上
    料理を作る工程も「見える化」されることにより、工程上のムダを省くことができ、また、誰が作っても一定以上の質を維持できる

  • クレーム・事故の減少
    衛生管理が徹底されることで異物混入や食中毒といったリスクが減り、クレームや事故を防ぐことができる

  • 万一のことが発生したときに、原因究明と改善対応の迅速化が図れる
    お客様に料理を提供する全ての工程を明らかにしているため、万一何かが起こったときも原因究明が迅速に行えるとともに、改善策の検討へとつなげることができる

  • 衛生管理が徹底されていることをアピールできる
    コロナ禍の今だからこそ、HACCPの考え方で衛生管理をしている店舗=衛生管理が行き届いている店舗、という評価につながる。さらに、店舗での取り組みやスタッフの姿勢などをSNSで積極的にアピールすれば、HACCPに前向きに取り組む衛生意識が高い店として、他店との差別化を図ることもできる

異物混入の対策に落とし込むには?

飲食店の新ルール・HACCPは店舗の作業を「見える化」することで、トラブルを未然に防ぎ、改善策を見つけやすくなります。飲食店において高い頻度で起こる異物混入対策にも、この考え方を取り入れることができますので、その方法をご紹介します。

異物混入につながる3つの要因と対策方法

HACCPの考え方にもとづくと、トラブルが発生する要因を洗い出すことが大切です。 異物混入の主な経路には「スタッフが持ち込む」「食材に付着する」「施設・設備・器具に由来する」の3つがあげられます。これらの経路に注意して、対策を行っていきましょう。

1. スタッフが持ち込む髪の毛やゴミには事前の対策を

異物が混入する経路の一つ目が「スタッフが持ち込む」ですが、スタッフが持ち込む異物の中でも圧倒的に多いのが髪の毛です。対策としては、厨房・フロアの区別なく全てのスタッフに対し、以下を徹底しましょう。

  • 帽子やバンダナなどの着用を義務付ける

  • 帽子やバンダナなどの着用前に髪の毛をとかす

  • ユニフォームの上からロールクリーナーをかけ、細かなゴミを取り除く

なお、髪の毛以外の異物混入を防ぐためにも「勤務中は指輪・ピアス・イヤリングなどのアクセサリー着用は禁止」「指や手に絆創膏などをしている場合は厨房で調理禁止」といったことも守ってもらいましょう。

2. 仕入れ後の管理もしっかりと

生鮮食品や業務用食材などの仕入れを業者にまかせている店舗も多いと思います。見た目は清潔でみずみずしいカット野菜でも、加工している工場で異物が混入したり、虫の幼虫や卵が付着していたりする可能性もあります。そのため、お客様の口に入れるものは、調理する前に必ず異物混入がないかチェックしましょう。

また、段ボールには虫が生息しやすいため、仕入れた食材を段ボールに入れたまま保管するのはNG。仕入れたらすぐにコンテナなどに移して保管しましょう。食材の保管場所を定期的に掃除することも大切です。特に、冷蔵庫やレンジなど熱源の周りはゴキブリの巣になりやすいので、入念にチェックするように。

3. 厨房器具にも要注意

鍋、スライサーなど厨房器具の劣化や破損、洗浄不足が原因で異物が混入することもあります。破損しやすいもの、使用頻度の高いものは、使う前に必ずチェックしましょう。

また、「できるだけネジやビスを使わず、溶接加工してあるタイプの調理器具を選ぶ」、「調理に不可欠となるラップは、万一混入してしまったときにも気づきやすい青系色のものを使う」といった方法もあります。


コロナ対策に加え、厳しい衛生管理が求められている今。新ルール「HACCP」の考え方を取り入れた衛生管理で、異物混入や食中毒といったトラブルを防ぎ、お客様の心をつかむお店作りを行いましょう。

written by

FOOD-IN編集部

FOOD-IN編集部ライターが未来の飲食店をつくるための経営ノウハウをどのメディアより”分かりやすく”をモットーにお届けします。