お客様の離れを5%改善=利益は25%アップするってほんと?(5:25の法則)

“マーケティング”と聞くと身構えてしまいますが、商品が売れる仕組みを作ることを指します。本連載ではマーケティングの代表的な法則や考え方をご紹介。すぐに活かせるものから、周りに教えたくなるようなものまで幅広くピックアップします。今回は「5:25の法則」をご紹介します。

5:25の法則とは

5:25の法則 5:25の法則とは「新規のお客様の5%を離脱させずリピーターにすることができれば、収益が25%アップする」という法則です。リピーターの獲得が飲食店の収益アップに欠かせないことをはっきり表す法則ですが、ではなぜ、リピーターは飲食店にここまで高い効果をもたらすことができるのでしょうか。

リピーターの獲得が、飲食店の収益アップに大きく繋がるワケ

新規顧客を獲得するよりも低コスト(1:5の法則)

新規顧客を獲得する際もリピーターを獲得する際も、一定のコストはかかるものですが、ポスティングや広告などが必要な新規顧客の獲得は、リピーターを獲得する際の5倍のコストがかかると言われています。これを「1:5の法則」と呼びます。

それぞれ獲得につなげるまでに必要なステップから考えてみましょう。

新規顧客を獲得するまでのステップ

飲食店が新規顧客を獲得する際は、お店を知らないお客様に対して、まずお店を知ってもらうところから始まります。ポスティングや広告、看板やお声掛けなどでお店の存在を知ってもらったところで、次は興味を持っていただく必要があります。興味を持っていただくためには様々な切り口、時にはクーポンなどで複数回アプローチを行ないます。そうしてお店に興味を持ってもらい、お客様の検討を経るとようやく来店となり、新規顧客獲得となるのです。

新規顧客獲得までのステップ
新規顧客獲得までのステップ

リピーターを獲得するまでのステップ

一方リピーターを獲得する際は、既にお店を知っているお客様に対して、お店の良さや利用するメリットをよりアピールするところから始まります。来店中のサービスを徹底することはもちろん、来店したお客様に公式SNSをフォローしてもらい新メニュー情報をお届けする・再来店クーポンをお渡しするなど、お店の価値を高めるための施策を行ないます。お客様が「良いお店だった」「また利用したい」と思ってもらうことができれば、リピーターの獲得に繋がります。

リピーター獲得までのステップ
リピーター獲得までのステップ

このとおり、新規顧客の獲得は一からお店の存在と魅力をアピールする必要があり時間もコストもかかる一方、リピーターの獲得は一度興味を持って利用した事のあるお客様が対象となるためその必要がなく、サービスの向上など店内で完結する施策も多いため、低コストであることが分かります。お店の収益は、売上ー経費(コスト)となるため、コストがかかる新規顧客の獲得を狙うよりも、一度来店されたお客様へのサービスを充実させてリピーターの獲得を狙うことの方が、お店全体の収益アップに繋がるということです。

紹介や単価UPの可能性がある

リピーターのお客様は、そのお店を気に入っているからこそリピーターになっているため、SNS上で紹介してくれたり、友人や家族を実際につれてきてくれる可能性があります。また、お店の良さや確実性を理解しているため、単価がUPするという効果も期待できます。つまり、新規のお客様が1回の来店でお店にもたらす利益よりも、リピーターのお客様が将来的にお店にもたらす利益の方が高いのです。リピーターの獲得が、コストをかけない新規顧客の獲得や単価アップに繋がる結果、お店全体の収益が上がるということになります。

1人の新規集客に1万円かかったとして、客単価が5000円だとします。1回しかこなかったらマイナス(集客費用に対して50%)ですが、3回きてくれたら1.5万円でプラス(150%)です。リピーター獲得の最大メリットは、その獲得コストの低さだけでなく、繰り返し来店してくれることで、獲得コストを上回る利益を将来的にもたらすという点にあります。

新規顧客獲得を行なわないというわけではない

もちろん、リピーターも最初は新規のお客様なので、新規のお客様を獲得することも必要です。つまり、5:25の法則から見えてくるのは単にリピーターを増やすということではなく、離脱防止の先のリピート率改善、そして新規顧客獲得率の向上、収益アップのためには中長期的に考えてこれら2つをバランスよく行なっていく必要があるということです。

では新規のお客様の離脱を防ぎ、リピーターにするためには?

新規のお客様の離脱を防ぎ、リピーターになっていただくためには、来店中の接客や料理の工夫、退店後のフォローなどでお客様に「またこのお店に行きたい」と思っていただく必要があります。実際のお客様の来店からお帰り、そのあとのフォローまでの流れをイメージしながら考えてみましょう。

初来店時は記憶に残るサービスを

初来店時は記憶に残るサービス リピーターになっていただくためには、お客様の中で記憶に残るお店になることが何よりも大切です。初めて来たお客様には、記憶に残るような手厚いサービスを行ないましょう。 例えば、とんかつ屋さんで料理を待っている間に行う「ゴマすり」といった、そのお店独自の注文システムなどについて「ご存知ですか?」「ご説明いたしますか?」と聞かれたことがあると思います。この質問は、お客様が分からないことをご説明するのはもちろんなのですが、そのお客様が初来店なのか、そうでないのかを見極める質問でもあります。もし初来店のお客様であれば、初来店プレゼントをするなど、手厚く記憶に残るようなサービスを行うことでお客様の記憶に好印象で残るお店となることができます。

通り一遍ではない、気遣いのお声がけも効果的

通り一遍ではない声かけも、特別視されている気がして記憶に残りやすくなります。雨が降っている日なら「お足元の悪い中ご来店いただき、ありがとうございます」、暑い日なら「ごゆっくり涼んでいってください」など、そのときに応じた声かけやサービスを行いましょう。

何度でも来たくなるメニュー作り

お客様がまた来たくなるようなメニュー作りのため、季節限定のものや週替わりメニューを取り入れるなど、一定の期間でメニューを変えることも効果的です。一度知ったお店でも、まだ知らない味・楽しみ方があるとアピールすることで、お店への興味が継続し、リピーター獲得に繋がります。数量限定のメニューも、希少性からお客様の再来店のきっかけになりやすいためおすすめです。

会計時にポイントカードやおみやげを導入

多くの飲食店で実施されているポイントカードやおみやげなども、お客様に再来店していただけるツールになります。ポイントを貯めればドリンク1杯無料、デザートサービス、○○円割引などの特典を付けることで、ポイントを貯めるために何度も足を運んでもらえます。特にランチは仕事場の近くなど、その人の日常行動の範囲でお店を回ることも多いため同じお店を何度も利用する傾向があります。ランチをメインにしているお店ではポイントカードの効果がより発揮されるでしょう。

また帰り際におみやげを渡すことも、お客様にお店の印象をしっかり残すのに効果的な手段です。おみやげにショップカードや名刺を同封することで、自然にお店の宣伝ができるというメリットも。クーポンなどの次回来店時に使える特典を付けておくと、印象を付けたり宣伝するだけでなく、再来店するきっかけにもすることができます。

ただし、おみやげを用意するのはお金がかかるので、原価を計算して負担にならず、かつお店をPRできるようなものにするのがベストです。

口コミ投稿に返信する

グルメサイトやSNS、Googleマイビジネスへの口コミ投稿にはなるべく返信をするようにしましょう。口コミ返信はお客様との繋がりを作れるだけでなく、お客様の存在やその意見を尊重していることのアピールにもなります。実際、自分の投稿に対してお店が反応してくれていると嬉しい、お店に好感を持つ、という声も聞かれます。

口コミ返信は平等に、丁寧に

良い評価の口コミだけでなく、厳しい評価の口コミに対して返信を行うことも大切です。厳しい意見も真摯に受け止め改善に努めるという姿勢をアピールすることで、次への期待につなげられる可能性もあります。また、返信の際は「ありがとうございます!」で終わらせず、他のおすすめや「またのご来店をお待ちしています」など丁寧に返信することで、見ている人すべてに「丁寧なお店」という印象を残せます。口コミへの返信はリピーター獲得だけでなく、新規のお客様に来店していただくのにも有効です。

SNSを活用する

LINEやInstagramなどのSNSは、お客様とのつながりを作り、退店後も再来店を促す情報を届けるために欠かせないツールです。 SNSは口頭でご案内する・店内POPを置くなどすることで存在をアピールし、フォローを促しましょう。SNSにはそれぞれ特徴があるため、使い分けることで上手な宣伝が可能です。

SNSの特徴

飲食店における各サービスの効果的な運用方法については「飲食店ネット集客」シリーズで詳しくご紹介します。

どの媒体を使うにしても、大切なのは定期的な情報発信です。情報が流れてこないと、お客様はお店のことを忘れてしまいます。お客様が帰ったあとも、SNSで定期的なフォローを行うことでお店のことを思い出してもらえるようにしましょう。

まとめ

5:25の法則にいわれるとおり、少しのお客様の離脱を防ぎ、リピーターになっていただくことで、収益は大きくアップします。新規顧客獲得のための施策もバランスよく行ないつつ、記憶に残るサービスやメニュー、退店後のフォローなどを意識的に行って、お客様にまた来店してもらえる飲食店を作りましょう。

次回は「飲食店でも取り入れたい「パーソナライズ」って?何から始めるべき?」を紹介します。

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