飲食店で多く採用されている「まかない」。求人募集の広告に「まかないあり」の一文があるだけで、応募者数が違ってくることもあるでしょう。店舗側もまかないで新メニューを試したり、期限切れ間近の食材を使うこともできたり、双方に利点があります。しかし、税金上は少し注意が必要です。今回はまかないの注意点についてお話します。
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「まかない」の魅力とは
「まかない(賄い)」とは、顧客ではなく従業員に対して提供される料理のことで、正式には「まかない料理」と呼びます。まかないは、活用の仕方によってお店を運営する側にとっても大きなメリットになることをご存じでしょうか。
まかない料理の従業員側のメリット
アルバイトスタッフや従業員にとっては、昼食や夕食の代わりになるまかないは大きなメリットです。
アルバイトスタッフの中には、親元を離れて一人暮らしをしている学生やフリーターも少なくありません。1カ月の生活費の中で、食費は大きな負担となります。
1食当たり500円の弁当を購入するとした場合、まかない付きの店舗で1カ月に10日アルバイトをすれば、5,000円の食費が浮く計算になります。食費を節約できることで、経済的な余裕が生まれるため、安心して仕事を続けられます。
また、お店の食事へ日常的に触れられることでお店への理解が自然と深まります。こちらは店舗側のメリットでもありますが、従業員側の知識習得にも貢献しているでしょう。
まかない料理の店舗側のメリット
店舗側のメリットはおおきく5つです。
- 新メニュー開発への活用
- 廃棄ロスの削減、有効活用
- キッチンのジュニアスタッフの経験値蓄積
- ホールスタッフがお店の味を理解し、接客に活かす
- スタッフ同士のコミュニケーション活性化
1〜2は経営面でのメリットです。
まかないとして提供する料理は、まかない用にオリジナルの料理を作るところや、店舗の既存メニューを提供するところもありますが、新メニューを開発するときにまかないとして提供して、食べた従業員からの評判やアイデアを検討することで、メニューとして採用するケースも。
飲食店の名物料理が実はまかないから誕生したという話も聞きますが、こちらは「まかない用につくったつもりだったが思いの外好評で本メニューに昇格した」パターン。日頃からスタッフのまかないへの反応をしっかりキャッチできていたからこそ実現したといえるでしょう。
また、まかないを裏メニューとして提供する店も珍しくありません。リピーターに対する特別感、限定感をあたえやすくなるほか、話題になれば新規顧客へのリーチにもつながります。
3〜5は主にマネジメント面でのメリットと言えます。
キッチンのジュニアスタッフにまかないを担当させることで経験値を上げたり、余ってしまった食材を活用して廃棄ロスをおさえる働きもになえます。一方まかないを食べる側であるホールスタッフにとっても、お店の料理を体験できる機会となり、調理方法や味付けなどへの理解が深まります。料理についてお客様に尋ねられたときも、よりスムーズに情報提供ができるようになるでしょう。
まかないを食べる時間はアイドルタイムにスタッフ複数人まとめてとる場合も多いですが、ホールとキッチンとのコミュニケーションがとれる貴重な時間でもあります。ここまでに紹介した味の感想をメニュー開発に生かす、ホールスタッフが味の理解を深めるなど、いずれも会話が活発に行われるほど良い効果を発揮します。
コミュニケーションが円滑になることで発言しやすい環境となり、悩みや相談も打ち明けやすくなるため、まかないを軸として、離職率軽減に向けた環境つくりも取り組めます。
「まかない」を福利厚生費にして節税
まかないはお店側、従業員側の双方にメリットがありますが、一方で処理には注意も必要。まかないを無料で提供すると、従業員への給料とみなされて、課税対象となる可能性があるためです。
「まかない」が課税対象になることも
店舗側、従業員の双方にメリットがある「まかない」ですが、基本的に税金がかかります。
一般的に、食事代は従業員が自分で負担すべきものとされています。そのため、従業員が無料や著しく低い価格で食事の支給(まかない)を受けた場合、その人は「支払うべき食事代を払わなくてすんだ」と解釈され、給与の現物給与=店側から食事という形で給与を受け取っているとみなされることがあります。現物給与とみなされる以上は、源泉所得税の課税の対象となってしまいます。
「まかない」を福利厚生費にするためには
まかないは基本的には課税対象になりますが、福利厚生費として扱うことができれば課税対象から外れます。そのためには以下の2つの条件があります。
- まかないを提供される従業員が「食事の価格」の半分以上を負担していること
- 経営者側の負担額が1カ月当たり3,500円(税抜き)以下であること
この要件のどちらかひとつでも満たしていなければ、食事代から自己負担額を差し引いた金額が給与として課税されます。また以下の場合も給与として課税されずに「福利厚生費」で処理することが可能です。
- 深夜勤務者に夜食の支給ができない代わりに、1食当たり300円(税抜き)以下の金額を支給する
- 残業または宿日直を行うときに、無償で食事を支給する
まとめ
「まかない」は、福利厚生費としてしっかり税務処理ができれば、店舗側、従業員側の双方にメリットがあるものです。お店を始める際には、まかないについても十分意識して取り組むようにしましょう。
今回はここまで。
次回は従業員の食事やまかないにも税金がかかる場合も。やるべき税務処理方法は?をご紹介します。
written by
FOOD-IN編集部
FOOD-IN編集部ライターが未来の飲食店をつくるための経営ノウハウをどのメディアより”分かりやすく”をモットーにお届けします。