「FLコスト」と「FL比率」とは?
飲食店の経営を考えるとき、把握しておきたいのが「FLコスト」と「FL比率」。これらは飲食店経営において、とても大切な指標と言われています。FLコストやFL比率が分かればお店の経営状態が分かり、また改善策を講じることもできます。この記事では、そんなFLコストとFL比率についてお話ししていきます。
「FLコスト」とは?
FLコストとは、食材費(原価)と人件費を合わせた費用を言います。飲食店の経営では、FLコストはとても重要な指標です。
FLコストは、なるべく少ない方が良いとされています。しかし、ただ使用する食材を安くしたり、雇用する従業員を減らしたりするだけでは、サービスが行き届かなくなってお店を続けることが難しくなってしまいますよね。
大切なことは、自分のお店にはどのようなサービスが必要なのかを把握すること。それを実現でき、かつ無駄をなくすためにはどうしたら良いのかを考えることです。 まずは計算方法を理解し、自身のお店のFLコストがどのくらいなのか、しっかり理解しましょう。
なにがFでなにがL?Rもある
FLコストのFは「食材費(原価)」、Lは「人件費」です。他にも「家賃」を表す「R」があります。
F=Food(原価、材料費)
「F」はFoodのFです。厳密に言うと食材を入れるパックやカップ、袋などもここに入りますが、飲食店の場合はイコール食材費と捉えても問題ありません。 このコストは、売上全体の30%ほどに抑えるのが目安といわれています。
L=Labor(人件費)
「L」はLaborの頭文字で、人件費を指します。以前はあまりFLコストは注目されていませんでしたが、人件費が高騰したことにより、その重要性が注目されるようになりました。
東京労働局*によると、平成9年には679円だった最低賃金が、平成29年には958円と10年間で279円も値上がりしています。1日8時間、月20日働いた場合の月給に換算すると、4万4,640円も差が出ます。
Lは一般的に20%以下が目安とされていますが、接客サービスも重視されるような飲食店の場合は、コストが高くなることも。
R=Rent(家賃)
「R」はRent、つまり家賃のことで、毎月のRコストは、10%~20%が適当と言われています。家賃は、一度賃貸契約を結ぶと退去するまでずっと同じ金額を払い続けることになります。基本的に契約後のコントロールができないため、物件は慎重に決めたいですね。
自分が所有している物件の場合は、固定資産税がRコストとなります。固定資産税は課税標準額の1.4%が基本。ただ、店舗と住居が同じ建物の中にある場合、面積によって固定資産税の軽減措置を受けられる場合があります。
FL比率とは?
FL比率とは、売上に対するFLコストの割合です。基本的には、下記のような計算式で求められます。
FコストとLコストで50%程度、FLRコストを足して、60%~70%ほどが目安と言われています。
ただし、F、L、Rのそれぞれのコスト比率は、業態によって差があります。例えば焼肉店やお好み焼きなどでは、肉やタネを焼くのはセルフサービスのため、人件費は少なくて済みますよね。一方、コース料理などを提供するレストランであれば、質の高い接客サービスも求められるため、人件費が必要です。食材と接客サービス、どちらに質を求めるのかは、オーナー自身の判断によります。
株式会社CXDネクストのデータ*によると、特に喫茶店や東洋・エスニック料理のお店はFL比率50%と低い傾向にあるようです。一方で、居酒屋やレストランは66%と高め。データを見ると、いずれの業態でもLコストは25%~30%と大きな差はありませんが、Fコストは25%~38%と業態によって差があります。
FLRコスト・FLR比率でわかること、できること
FLRコスト・FLR比率を見れば、そのお店の経営状態が分かります。FLR比率は売上に対するコスト比率です。つまり、これが低ければ低いほど、利益が出ていることになります。逆に高ければ高いほど、経営は危ういということ。
ただ、数値が高いからすぐに倒産するかと言われれば、そうではありません。きちんと数値化することによって、お店の経営状態を把握し、目標や改善点を見つけるヒントとなります。
例えば、Fコストの比率が多い場合には、まず食品ロスを考えてみましょう。材料を多めに発注したら食材を廃棄させてしまった、料理を客層が食べる量より多く盛り付けているなど、食材を無駄にしていることはありませんか?こうした点は、食材を適度に用意して切れたら思い切って売り切れにする、お客様が料理を残すことが多いと感じたら量を減らすなどで改善できます。
Lコストの比率が多かったら、忙しい時間帯だけ人を雇う、同時にできそうな業務は兼任してもらうなどの方法があります。Rコストが高い場合には、大家さんと家賃交渉をしたり、場合によっては引っ越しを検討したりすることでコストを抑えられることも。
このようにFLRコストを算出することで、健全な経営ができているのか、できていないとしたら何を改善すれば良いのかが分かってきます。
さらに具体的な改善方法について、次の記事で詳しく紹介していますのでそちらを参考にしてみてください。
売上が倍になったとき、FLR比率による利益の違い
では、ここからはFLR比率による利益の違いを、いくつかの例を出しながらご紹介します。 まずは、下記のような2つの店舗があったとします。
【A店】 F=30%、L=20%、R=10% 【B店】 F=35%、L=20%、R=10% どちらも売り上げ300万円
どちらも売上は同じですが、B店の方がF、つまり食材費(原価)が5%多いです。両店の実際の利益を算出するとこのようになります。
【A店】 300万円−300万円×(30%+20%+10%)=120万円
【B店】300万円−300万円×(35%+20%+10%)=105万円
B店の方がFが5%多い分、利益は15万円ほど低くなります。「たった5%で?」と思うかもしれませんが、1年換算するとなんと180万円も利益に差が出る計算になります。毎日正確にコストを管理する重要性がわかりますよね。
単純に売上をさらに上げれば、利益もそれに応じて上がります。A店のようにFLR比率60%以内でおさめている場合、
売上 300万円…利益120万
売上 320万円…利益128万
売上 320万円…利益140万
︙
という具合です。
1日あたり2人客を2組ずつプラスで集客できた場合の違い
次に、先述した2つの店舗に、より多くお客様が来店された場合を見てみます。A店、B店とも、内容は以下のように設定しています。
・お店は1ヶ月30日営業していて、定休日はなし
・1ヶ月毎日、2人1組のお客様が2組(=4人)、いつもより多く来店される
・客単価は3,000円
・FLR比率や売上は先述した比率、金額と同じ
この場合、先ほどの売上に、毎日4人分の売上が加算されます。4人分の売上は30日で、
3,000円×4人×30日=36万円
となり、先述した300万円の売上と合わせ、336万円です。売上が約1%上がったことになりますね。 これを先ほどの利益の計算に当てはめて、A店、B店それぞれの利益を出してみます。
【A店】 336万円−336万円×(30%+20%+10%)=134万4,000円
【B店】336万円−336万円×(35%+20%+10%)=117万6,000円
両店の利益の差額は、16万8,000円です。売上が約1%上がったことにより、利益の差額も約1%増えています。グラフでみてみましょう。
B店は売上げを増やしても、実際にはFコストが5%低いA店の方が利益が多いのがわかります。
つまり集客に労力をついやすよりも、FLコストを改善するほうが手っ取り早く利益を増やすことができる場合もあります。実際に1日4人のお客様を集客するとなると、チラシを配ったり広告やクーポンを配ったり結構大変ですよね。最初にFLコストを見直してから、集客に力をかけるようにすることで、A店のように利益を最大化することができます。
さらに、売上単価を1割アップできた場合の違い
では最後に、売上単価がアップした場合を見ていきます。A店、B店とも、お客様の数と営業日、FLR比率は先ほどと同じですが、客単価を1割アップさせて3,300円になったと仮定します。
この場合、300万円の売上にプラスする金額は、
3,300円×4人×30日=39万6,000円
です。売上の合計金額は、300万円に上記の金額を足して、339万6,000円となります。これを先ほどと同じように利益の計算式に当てはめます。
【A店】 339万6,000円−339万6,000円×(30%+20%+10%)=135万8,400円
【B店】339万6,000円−339万6,000円×(35%+20%+10%)=118万8,600円
両店の利益の差額は16万9,800円となりました。
こちらも先ほどの例と同じように、B店は単価を1割アップさせても単価はそのままのA店の方が利益が多いのがわかります。
まとめ
FLコストやFL比率は、簡単な計算でお店の経営状況を知ることができます。まずは自身のお店のFLコストやFL比率がどのくらいなのか、紹介した計算式で計算してみましょう。もしFL比率があまりに高いようなら、食材費や人件費の無駄を削減する努力も必要です。飲食店経営にとっては非常に重要な指標となるため、覚えておくと良いでしょう。
次回は実際にFLコストを下げる方法について詳しく解説します。
written by
FOOD-IN編集部
FOOD-IN編集部ライターが未来の飲食店をつくるための経営ノウハウをどのメディアより”分かりやすく”をモットーにお届けします。