「ホールがうまく回らない」「忙しい時間帯には人手が足りなくなってしまう」という悩みを抱えている飲食店経営者は多いのではないでしょうか?そんな方は人員を増やす前に、ホールの効率化を考えてみましょう。3つのポイントを押さえれば、もっとうまく回るようになるはずです。本記事ではホールスタッフを効率化する3つのコツをご紹介します。
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ホールの効率化、どうする?
店舗営業中における現場スタッフの役割は、主にキッチンとホールの2つに分けられます。
特にホールでの仕事は、席への案内やオーダーの受注、配膳からテーブルセッティングなど、お客様と顔を合わせることの多い仕事です。そのため、ホールスタッフの評判がお店の評判に大きく影響します。お店の雰囲気をより良くし、来店したお客様にとって心地よい空間を演出し、「また来たいな」と思っていただくためには、ホール業務を効率化してお店の顔となるスタッフが働きやすい環境を整え、教育していくことが大切です。
経験値の違いにより、お客様や他のスタッフの動きを見て気の利くアクションを取れる人もいれば、改善の余地がある人もいるでしょう。ですが、育成側がスタッフにわかりやすい「動き方のコツ」を共有すれば、ホールの動きは大きく変わります。
では、ホールの動きをよりよくしつつ、効率的に業務をこなしてもらうにはどうすれば良いのでしょうか?そのポイントは3つあります。
1.「優先順位」を付ける
ひとつ目のポイントは、仕事に優先順位を付けることです。優先順位が決まっていれば、忙しい中でも最初に何をするべきなのかが分かるため、すぐに仕事に取りかかれます。 優先順位はお店によって違いますが、以下の順序が一般的です。
- お客様からのクレーム対応
- お客様からの注文(料理の提供や注文の受付など)
- お店内部の作業(バッシングや水の追加など)
- 自発的なサービス
まずはお客様から受けたクレームの処理が最優先。次に、お客様からの要望に対して、的確に応えることです。特に料理の提供やお会計、注文の受付などは、何よりも「お客様をお待たせしないこと」を優先に動きましょう。それらを完了させたら、バッシングや水の追加といった、お店内部で必要な作業を行います。
4の自発的なサービスは、たとえば卓上の七輪でお肉を焼いて差し上げる、誕生日のお祝いをするなど、主にお客様とのコミュニケーション、が該当します。1〜3を効率的に行うことで、4のような付加価値の提供に割ける時間を増やしたいですね。
なお、優先順位はお店のコンセプトによって異なります。例えば「熱い料理をアツアツのうちに提供する」がコンセプトのお店で、アツアツではない料理が出てきたら、お客様はがっかりしてしまいますよね。こうした場合には、何よりもアツアツのうちに提供することを優先しなければなりません。
また、そのときどきの状況によっても優先順位は異なります。一般的にバッシングはお客様からの注文よりもあとに対応しますが、もしお客様が席が空くのを待っている状態であれば、バッシングを優先するべきでしょう。
まずはお店で基本の優先順位を決めておき、スタッフに共有しましょう。ここではお店のコンセプトやキャパシティに合致する順番を考えることが大切です。お客様が不満を感じないようにするにはどうしたら良いのか、どんな優先順位で動いたら効率良くホールを回せるのかなど、スタッフで話し合ってみましょう。
2.「チームプレイ」で動く役割分担
ふたつ目のポイントは、ホールスタッフの間で役割を決めておくことです。役割分担をしておくことで、余計な仕事をする可能性が減るだけでなく、するべき仕事をしていないという事態も防げます。
例えば、Aさんはご案内・会計、Bは1階の接客、Cさんは2階の接客など各自で優先すべき役割をそれぞれ決めておけば、自分のやるべきことが明確になり、責任感も生まれます。清掃などの内部業務は、シフトの中に振り分けておくと良いでしょう。
もちろん、状況に応じてフレキシブルに対応することも大切です。もし余裕があって、他の人の仕事を手伝えそうな時は、該当スタッフやリーダーに一声かけてから実行してもらうよう周知しましょう。何も言わずに他人の仕事に手を出すと、かえってチームワークを乱す結果になりかねないためです。チームのバランスを第一に連携していけるよう、スタッフ間のコミュニケーションを大切にしましょう。
3.「1WAY 3JOB」を徹底しよう
みっつ目は「1WAY 3JOB」の徹底です。 1WAY 3JOBとは、1つの行動で3つの仕事をすることを指します。
これを徹底している企業に「キッチンクラウド」があります。 キッチンクラウドとは、居酒屋「塚田農場」などを展開するAP HOLDINGS(エー・ピーホールディングス)が、2020年横浜にオープンさせた宅配・デリバリー専門店。こちらでは、1回に3~4件への配達、もしくは1件に3~4食分を配達し、配達のついでに食器の回収やチラシ配布も行っています。通常のデリバリーでは高くなりがちな委託料金を、1WAY 3JOBを徹底することによってコスト削減しています。
店内飲食の業務に置き換えて考えてみましょう。例えば、お客様に料理を配膳する——これだけでは、1つの行動で1つの仕事しかできていません。 ホールにいれば、配膳のタイミングであわせて行える仕事はたくさんあります。
- ホールを見渡してドリンクの減り具合を確認する
- 追加の注文をしそうな素振りのお客様を見逃さないよう視野を広くして歩く
- 他のテーブルの空になったグラスやお皿を下げる
- 他スタッフの動きを確認しながらできることがないか探す
お客様に料理を運んだら、空いているお皿を下げ、ドリンクをお伺いすれば、1つの行動で3つの仕事をしたことになります。これが、1WAY 3JOBです。ベテランのホールスタッフの中には1WAYで4JOB、5JOBする人も。
これまでにご紹介した「優先順位」と「チームプレイ」をスタッフに共有した上で、スタッフ1人1人が「1WAY 3JOB」を実施できると業務の効率はグッと改善します。
特にランチタイムやディナーなど、飲食店にとって忙しい時間帯は、1WAY 3JOBをきちんと実践できているか否かが回転数や顧客単価にも影響します。
スタッフに1WAY 3JOBを徹底させるには、新人のときから意識してもらうことが大切です。例えば「配膳をしたら、ドリンクのチェック、空いている食器の片付けをするように」と、3つの仕事をセットにして教えましょう。また「これをやったら、ついでにこっちも一緒にできる」と気付いたことがあれば、スタッフ間で共有するのも良いでしょう。
ただし、いくら1つの行動で3つの仕事ができたとしても、仕事が雑であれば意味がありません。ひとつひとつの仕事を丁寧に行うようにしましょう。
ITツールの導入で効率化
ホールの効率化を図るという観点で考えると、ITツールを導入する方法もあります。特にオーダーは、お客様をお待たせしたり、オーダーを取り違えたりする可能性もあるため、IT導入はぜひ検討していきたいところです。
具体的な例としては、オーダーを即座に入力できるOESや、お客様が好きなときに注文できる注文用タブレットなどがあります。 また、日経トレンディと日経クロストレンドが発表した「2020年ヒット商品ベスト30」にも選ばれた「モバイルオーダー」は、店内飲食での導入も進んでいます。お客様自身のスマートフォンを使って、注文から会計まで済ませられるサービスで、Showcase Gig社の「O:der Table(オーダーテーブル/旧「SelfU(セルフ))」などが該当します。
注文から会計までをすべてお客様がセルフで済ませられるため、スタッフの負担は大きく軽減され、おもてなしなどに専念できるようになります。同時に、注文や会計時のミスをなくすことにも繋がるでしょう。
まとめ
「優先順位を決めておく」「役割分担をする」「1WAY 3JOBを徹底する」。この3つのポイントを押さえることで、ホールは効率的に回るようになります。さらにITも導入すれば、より効率化が図れるでしょう。
これらのポイントは、忙しいタイミングにこそ重要になってきます。ホールがうまく回らないと思ったら、これらのことが実践できているか、考えてみてくださいね。
次回は「確定申告にも必要!飲食店の棚卸の意味をあらためて考えよう」をご紹介します。