店内飲食とゴーストレストラン、収益の違いは?仕組みを読み解く

新型コロナウイルスの影響もあり、近年注目されているゴーストレストラン。店舗を持たないゴーストレストランの場合、通常の店内飲食と違う収益の考え方をしなければなりません。今回は店内飲食とゴーストレストランの収益の違いについてご紹介します。

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デリバリーに特化!ゴーストレストランのはじめかたと運営の基本

ゴーストレストランとは?店内飲食との違いは?

ゴーストレストランとは、電話やインターネットで注文を受けた料理をデリバリーで配達するタイプのレストランです。店内飲食のレストランと大きく違う点は、お客様を迎え入れるための店舗が必要なく、立地にも気を配る必要がないこと。そのため、通常のレストランよりも少ない資金で開業できます。

近年では専門店のように、コンセプトがしっかりしたゴーストレストランが人気となっています。

ゴーストレストランのはじめかたと運営の基本についてはこちらから

デリバリーに特化!ゴーストレストランのはじめかたと運営の基本

配達代行サービスの仕組みは?

ゴーストレストランを営業する上で必要となるのが「配達代行サービス」です。配達代行サービスは、飲食店に代わって宣伝や注文、配達、決済を行ってくれます。ゴーストレストランは認知度を上げることが難しいため、こうしたサービスを利用すると良いでしょう。

代表的なものに「Uber Eats」と「出前館」があります。それぞれの仕組みを見てみましょう。

Uber Eats

Uber Eatsは、スマートフォンを使って料理のデリバリーができるシステムです。まずお客様がUber Eatsで注文をすると、その内容が飲食店に届きます。飲食店は注文を受けた料理を作り、それを配達パートナーがお客様のところに届けるという仕組みです。

フードデリバリー業者サービスの仕組み図

お客様が支払うのは、料理の代金と配達手数料。料理の代金は飲食店に、配達手数料は配達パートナーの報酬として支払われます。なお、配達手数料は混雑時や悪天候時には高くなり、配達員が多いときには安くなるなど変動します。また注文が700円未満の場合は、150円の最低注文手数料がかかります。

一方、店舗側は注文総額の35%を手数料としてUber Eatsに支払います。飲食店、配達パートナー、Uber Eatsの3つが連携してデリバリーを行っているため、お金の流れは複雑ですが、飲食店側は一律で35%の手数料という非常にシンプルなシステムです。

フードデリバリー業者サービスを活用して効率化

出前館

出前館もUber Eatsと同様、アプリを使って料理を配達してもらえるシステム。大まかな流れもUber Eatsと同じで、注文した料理を飲食店が作り、配達員が届けます。Uber Eatsとの違いは、研修を受けた直属の配達員がいることと、自社での配達も可能なことです。

お客様は料理の代金と配送料を支払いますが、注文金額によっては無料になることも。お店側は、商品代金の10%をサービス利用料として、25%を配達代行手数料として、~3%を決済代行手数料として出前館に支払います。なお、自社で配達する場合には、配達代行手数料は不要です。

Uber Eatsと出前館の違いとして、登録制の配達パートナーを採用しているか、直属の配達員を雇用しているかという点が挙げられます。

配達パートナー制と専属配達員それぞれのフードデリバリー業者サービス一覧

ゴーストレストラン と既存店でのデリバリー対応は異なる

Uber Eatsや出前館などの配達代行サービスを利用する場合、先述したように手数料がかかります。そのため店内飲食で提供するよりも価格を高めに設定しておかないと、手数料の分、利益が減ってしまいます。

では、実際にどのくらいの利益が出るのか、Uber Eatsの「手数料35%」を例に試算してみましょう。

既存店でのコストが、原材料30%、人件費25%、家賃15%、その他20%で運営していたと仮定します。

この考え方のまま、デリバリー用のメニューに付加される「手数料分を商品代金にのせる」とすると、もともと1000円で販売していたものは、大体1590円で販売する必要があります。

ですが、表面上の売上金額も変わりますから、もともと10%あった営業利益は配分する金額自体は変わらなくても、比率で見ると6%まで落ちています。

店内飲食用のフードに単純に手数料を上乗せした図

このままの運営方法だと、デリバリーの売上が上がるほど、非効率になってしまいます。

次に、デリバリーに特化したいわゆるゴーストレストランの場合の内訳をみてみましょう。

ゴーストレストランのコスト配分に見る原価のコントロール例

はじめから手数料分を考慮したコストになっています。

来店するお客様を想定していない分、ホールの人件費、家賃を圧縮しています。「その他」含まれる光熱費等も同じ理由からやや安く済み、販促費もデリバリー業者のプラットフォームを利用することで持ち出しを最小限に抑えています。さらに、対象メニューを絞る等して材料費をコントロールすることで20%まで下げています。

では、すでに店内飲食を展開している店舗の場合はどうすればよいでしょうか?

たとえば、ゴーストレストランと同じように、デリバリー向けのメニュー展開を再考して、原材料コストを下げる、店内飲食向けの人材をデリバリーもプラスで対応することでデリバリー側でかかる人件費を最小限にすることが考えられます。

店内飲食型の飲食店がフードデリバリー向けにコスト配分を再考した例

コストの内訳はお店の運営方法によりますが、ここで重要なことは「デリバリーと店内飲食のお金の考え方を混同しない」ことです。

単純に既存メニューに手数料分を上乗せするのではなく、デリバリー向けのコスト計算をしっかりおこないましょう。

売上を上げるには?

デリバリーにおけるポイントは「商圏を調査する」「メニューを絞り見やすくする」「配達パートナーを大切にする」の3つです。

商圏を調査する

売上を上げるには、商圏の調査が重要です。デリバリーでも配達員のいるエリアはある程度決まっているため、あまり遠くへの配達はできません。そのため、自身のお店から約3キロを商圏とし、その中でターゲットや競合店の調査を行いましょう。

例えば近くにオフィス街があれば、昼食としてデリバリーを頼む会社員をターゲットにできます。一戸建ての多い住宅街が近ければ、ファミリー層をターゲットに大人数で食べられるようなメニュー。単身向けのアパートやマンションが多い地域なら、1人向けで自宅ではなかなか作れないメニューなどを提案してみましょう。

同時に、商圏内にある競合店も調査します。例えば、すでに人気のハンバーグ専門店がデリバリーを行っているところで同じもので勝負しようとしても、簡単には勝てません。必ず他店の調査を行い、自社の強みを見つけて差別化を図ることが大切です。

売れる居酒屋メニューって?商圏に合わせたメニューの考案方法

メニューを絞り見やすくする

デリバリーでは、メニューを絞って見やすくすることもポイントのひとつ。例えば「恵比寿ガパオ食堂」さんは、1日に50食~100食をUber Eatsで売上げる人気店です。ここでは、Uber Eatsで提供するメニューはすぐできるものに絞っています。

お客様はスマートフォンでメニュー一覧をスクロールして見るため、あまりメニュー数が多いとどれを選ぶべきか迷ってしまいます。ターゲットを明確にして、ある程度メニューを絞るようにしましょう。

Uber Eatsで人気を集める恵比寿・ガパオ食堂のメニュー例
出典:ガパオ食堂Uber Eats

また、取扱っているメニューが店名で分かるとお客様に選んでもらいやすくなります。先述した恵比寿ガパオ食堂さんも、店名を見れば「ガパオのお店なんだ」とすぐに分かります。加えてデリバリーで注文をしてもらうには、画像が非常に重要です。設定できるところにはすべて画像を入れ込みましょう。タイトルや説明文もアピールポイントを明確にして、お客様が食べたいと思うようなタイトル・文章にすることが大切です。

配達パートナーを大切にする

デリバリーにおいて非常に大切な配達パートナー

配達パートナーを大切にすることも、ゴーストレストラン成功のポイントです。仕事上のパートナーではありますが、配達パートナーが「良いお店だ」と思ってくれれば、積極的に配達を請け負ってくれたり、友人を連れてお客様として来店してくれたりすることもあります。

逆に、よくない印象をもたれてしまうと、対応してくれるパートナーさんが減ってしまう可能性があります。前述したパートナー制度を採用しているサービスは、配達パートナー側で仕事を選べる点が背景にあります。

たとえば、受け渡しの場所がわかりづらい、長時間待たせてしまう、対応時の口調がきついなど。お客様の目に触れないからと調理場の整理整頓、衛生面での配慮がおざなりになっていることはもってのほかです。SNSでの炎上もありえます。

配達パートナーを仲間として大切にし、スムーズに受取や配達ができるようにしましょう。

まとめ

ゴーストレストランは、通常の飲食店とは違う利益計算や宣伝広告が求められます。こうした点をしっかり押さえて設計し、状況にあわせて改善していきましょう。

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