売れる居酒屋メニューって?商圏に合わせたメニューの考案方法

「飲食店は立地で決まる」なんて言葉を聞いたことがある人も多いと思います。確かに、飲食店にとって立地は大切です。しかし多少立地が悪くても、商圏を把握してそれに合ったメニュー作りを行うことで成功しているお店もたくさんあります。

今回は、特に居酒屋にスポットを当て、商圏に合わせたメニュー作りの方法をご紹介します。

前回の記事はこちら

【初心者向け作業シート付】お店に貢献してるメニューは?データでしっかり分析しよう

どんなメニューが好まれる?お店の立地と商圏を考えよう

居酒屋のメニュー作りでは、まず店舗の立地から商圏を把握することが大切です。商圏とは、お店を利用するお客様、もしくはターゲットとしているお客様が生活している範囲のこと。居酒屋などの飲食店では立地は非常に重要です。しかし、商圏を把握しその商圏に住むお客様に合わせたメニュー作りを行うことで、立地が悪くても人気店になることはできます。

商圏に合わせたメニュー作りを行う前に、まずどの地域からお客様が来店されるのかを考えましょう。居酒屋の場合は、大衆店ならお店から30分圏内、一般的な居酒屋なら1時間圏内と言われています。 ただし、これはあくまで目安です。一定の食材を専門的に扱ったり、変わったイベントを行ったりと個性的なお店であれば、遠方からでもお客様が来店される可能性はあります。

商圏を設定したら、次に商圏に住んでいる人口や年齢層などを把握します。これを調べるには「e-Stat「地図で見る統計(jSTAT MAP)」」が提供するが便利です。これには国勢調査等のさまざまなデータが登録されており、その地域に住む人口や世帯数、年齢、性別などを知ることができます。

商圏を把握する際には以下の点を調べておきましょう

  • 人口
  • 年齢層
  • 性別
  • 競合店
  • 商圏にある駅と乗降客数
  • 近隣のオフィスなど
  • 昼と夜の人口

この他、交通量やメインの移動手段など、さまざまな角度から商圏を把握しておくことで、より効果的なメニュー作りが行えます。

次にお店の立地の条件も洗い出してみましょう。

下記のように洗い出します。

立地の特徴 例:XX駅から徒歩2分
どんな場所か? ・オフィス街である
・近くに大手商社のビルとテレビ局がある
・駅前の通りからは1本入った場所にある…など
物件の特徴・席数 路面店  15坪 席数26席…など

例えば、オフィス街であれば土日は人が少ないことが考えられます。土日限定メニューを作るなど対策を考えることができますよね。坪数が少ないのであれば、思い切って立ち飲み居酒屋にして、回転率をあげるスピードメニューを増やすなども良いでしょう。

競合しそうなお店も確認しよう

商圏の把握とともに、近隣の競合しそうなお店を調べておくことも大事。同じ商圏内にある居酒屋はもちろんですが、夜に開いている食堂やカフェなども競合店となり得る可能性があります。お客様が利用するシーンを具体的に想像すると良いでしょう。商圏ともに、「近くにおしゃれなカフェ多いけど、会社帰りの男性がふらっと行きたくなる大衆居酒屋は少ない」などお客様のニーズを仮説立てるのに役立ちます。

商圏から想定される利用シーン

商圏を把握したら、利用シーンとターゲットを洗い出していきましょう。例えば、オフィス街であれば仕事帰りのサラリーマンやOLが多くいます。そういった人をターゲットにしたお店にすることで、多くの来客を見込めるでしょう。住宅街にあるなら、近所の住人やその友人などをターゲットにできます。

まずは下記のような表を作って、利用シーンとターゲットを整理してみましょう。

利用シーン 動向客:
利用頻度:
滞在時間:
時間帯:
定休日:
ターゲット
コアターゲット:
年代:
性別:
ペルソナ 例)○○商社で働く男性。28歳独身。年収500万円。残業が多い。仕事仲間と仕事帰りによく飲みに行く

ペルソナはなるべく細かく設定すると、お客様のイメージが湧きやすく、ターゲットに合ったメニューを作りやすくなります。また上記が決まることによって、お店のコンセプトも決まってきます。

例えば、富裕層の住む地域が近く、彼らをメインターゲットにする場合。安いものをたくさんよりも、質の良いものを厳選し、こだわりを持って作ったものの方が受け入れてもらいやすいでしょう。逆に年収の低い人をターゲットにするなら、低価格で気軽に入れるお店の方が好まれます。 このようにターゲットを誰にするか、どのようなシーンで利用されるのかを設定することで、単価やメニューが決まってきます。コンセプトが決まったら、それに合うメニューや客単価も分かってきます。

例えば、先述した表のペルソナであれば、以下のような設定が作れます。

コンセプト 会社帰りのサラリーマンが、仲間と一緒に気軽に入れる立ち飲み屋。
お酒に合う家庭料理をメインとし、独身の男性が実家を思い出せるような雰囲気にする。
商品力 主食材は名古屋コーチン。鶏肉のジューシーさと卵の素材そのものを味を楽しめる。
メニュー ・鶏のからあげ
・鶏だしの卵スープ
・揚げ出し豆腐
・だし巻き卵
・ポテトサラダ
想定単価 ・ドリンク…600円×3杯=1,800円
・お通し…400円
・だし巻き卵…650円
・ポテトサラダ…550円
・鶏のからあげ…750円
合計:4,150円

仕事帰りに後輩を誘って軽く飲むのにちょうどいい値段なんだよね。料理も派手なわけではないけど、頻繁に通っても食べても飽きない味つけだから、ついつい立ち寄っちゃうんだよな。

例:居住者多め地区の駅やや遠いver

先述した例は、駅が近いオフィス街にあるお店です。では、居住者が多い地区で、駅から少し遠めの商店街はどのような設定になるのでしょうか?まずは先述した表を使って、あなたのお店のターゲットなどを決めていきましょう。

利用シーン 動向客:女性客・ファミリー・学生
利用頻度:2週間に1回
滞在時間:3時間~4時間
時間帯:夕方~深夜
定休日:なし
ターゲット
近隣に住む女性:
年代:20代~30代
性別:女
ペルソナ ○○商店街の近所に住む女性。25歳、独身。〇〇商店街にある店の娘で、年収400万円。
休日は友人と商店街に遊びに来る。
キレイなものが好きで、写真を撮ってはインスタグラムに投稿。気の合う友人と休日前夜などに飲みに行く。

商店街や住宅街の場合、その地域に住む人を味方にすることがセオリーです。特に購買意欲の高い女性が主軸となるため、今回は若い女性をメインターゲットにしています。 この場合、コンセプトやメニューなどは以下のようになります。

コンセプト 女性同士で飲みに来られるおしゃれな居酒屋。
健康に気を使ったヘルシーなメニューがメインで、思わず写真を撮りたくなる見た目。
商品力 豊富なカクテルやワイン、ソフトドリンク。お酒に合う豊富な小皿料理
メニュー ・おつまみの盛り合わせ
・豆乳コラーゲン鍋
・カマンベールチーズ揚げ
・バジルとエビのアヒージョ
・シーザーサラダ
・アボガドの生ハム巻
・アイスクリーム
・フルーツの盛り合わせ…など
想定単価 ・ドリンク…600円×2杯=1,200円
・お通し…400円
・おつまみの盛り合わせ…650円
・豆乳コラーゲン鍋…1200円
・アイスクリーム…250円
合計:3,700円

「おみまみ盛り合わせ」は色んなものを少しずつ食べたい女子の希望を叶えてくれてる!カクテルも豊富でお酒が苦手な私でも嬉しいんだよね。料理の見た目も気を使っていて、行く度にインスタにも投稿しちゃう。今度は友達連れてこようかな

また女性客をまず取り込んで、それに関連する家族や友人などを連れてきてもらうという方法も可能です。特に住宅街を商圏とするお店の場合は、主婦を取り込むことで家族などと来店してもらえるきっかけになります。

居酒屋メニュー考案の注意点

居酒屋のメニューを考える際に注意したい点は「お通し」と「構成」です。

お通しは原価が低くお客様を惹きつけるものを

まず、お通しは原価が低く、またお客様の心を掴むものを選びましょう。お通しは、居酒屋で最初に出すメニューであり、すべてのお客様に提供するものです。あまりに原価の高いものを出してしまうと、利益が少なくなってしまいます。かと言って、お通しが残念なものだと、お客様の満足度を下げてしまう可能性も。お通しは、お店のコンセプトに合わせながら、原価は低く、かつお客様に期待を持たせるような小皿などがおすすめです。

メニュー数を限定して幅を持たせたメニュー構成

次に気を付けたいのは、メニューの構成。居酒屋に行ったとき、どのような順序でメニューを頼みますか?最初は乾杯のドリンクと、サラダやおつまみの盛り合わせ、次にメインでピザや肉料理などの重いもの、最後にデザートやお茶漬けで締めなんてパターンの方は多いのではないでしょうか。

ではもし、肉料理や魚料理などのメインしか置いておらず、軽くつまめるものやデザート、締めに食べられるものがない居酒屋はどうでしょうか?やっぱり最初から肉料理は重いし、締めには軽いものが食べたいなと思いますよね。 居酒屋メニューを考える際には、こうしたメニュー構成が大切です。サラダやおつまみ、メイン料理、締めの料理など、幅広く用意しましょう。メニュー数は豊富である必要はありません。むしろメニュー数が多いと廃棄ロスが発生する可能性が高くなるため、メニュー数は限定して、幅を広く持たせることが大切です。

メニュー構成の考え方はこちらの記事も参考に!

【初心者向け作業シート付】お店に貢献してるメニューは?データでしっかり分析しよう

「メニューを考えるのが難しい」という方は、大手居酒屋チェーンのメニューを参考にしましょう。チェーン店はメニュー構成がしっかりしており、居酒屋で食事をする際の流れがよく考えられています。例えば、人気焼き鳥チェーンの「鳥貴族」。メニュー数は決して多くありません。しかし、メインの焼き鳥を中心に、枝豆、キャベツ盛り、チャンジャ、煮玉子などの「スピードメニュー」、フライドポテト、唐揚げなど「揚げるだけ系」、とり釜飯、とり雑炊などのご飯ものなどをバランス良くラインナップしています。鶏肉料理が中心で、豚肉、牛肉を使ったものはメニューになく、調理の手間やロスを減らしています。

商圏を把握し、そこに住んでいる人々を意識したメニュー作りを行えば、十分お客様を呼び込めます。まずは、お店の商圏がどうなっているのかをさまざまな角度から調べ、メニューを見直してみましょう。

次回は「飲食店の専門店化。メリットや注意点、メニュー作りのポイントを解説!」を紹介します。

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