下北沢のカレー店・八月で働く じょいさん「大好きなお店の一員になれた」

いつもおいしいあの店の料理やお酒。お店の看板となる店員さんがいることで、さらにおいしくなるような気がする。そんな名物店員さんにお店を紹介してもらう、気になるお店のあの人インタビュー「こちらのお席どうぞ」。

今回訪ねたのは、下北沢に2020年春にオープンしたカレー店『八月(はちがつ)』。10種類以上のスパイスとハーブで作った無添加カレーが自慢の店で、カレーの街・下北沢の民に愛されています。『八月』で店員として働いているのが、じょいさん。お店でアルバイトをするかたわら、フリーのイラストレーター・デザイナーとしても活躍しています。そんなじょいさんが「こちらのお席どうぞ」と席を案内してくれました。

<じょいさんプロフィール>
1996年大阪生まれ。港南造形高等学校総合造形科を経て、京都造形芸術大学情報デザインコースへ進学し、自身の個展なども開催。卒業後上京し、デザイナーとして会社に就職。2019年に退職し、飲食系のアルバイトをしながら、フリーでデザイナーとイラストレーターの仕事をスタート。音楽やファッションの領域でデザインを担当するほか、WEBショップでオリジナルのグッズの販売も行う。2020年秋頃より『八月』にてアルバイトを始める。
Instagram(@joyboygirl)

大好きな下北沢のカフェバーが新店を出すとInstagramで知って、一員になれるチャンスだと思った

「こちらのお席どうぞ」と案内されたのは『八月』のカウンター。ここはカウンターをメインとしたカレー店で、お客さんと店員の距離が近いのが特徴的。

以前から飲食店でのアルバイトを重ねたじょいさんは、深くコミュニケーションに携われるような個人店が好きなんだとか。

『八月』で働き始めたきっかけは、同じく下北沢に店を構える中古レコードショップとCAFE・BARが融合した『CITY COUNTRY CITY』のInstagram投稿だったそう。

「元々『CITY COUNTRY CITY』のお店やスタッフの人たちの雰囲気が大好きで。インスタもフォローしていたのですが、ある日姉妹店がオープンするという求人情報が投稿されて、すぐに応募しました。そういった動機だったので、実は『八月』がカレー屋っていうことは面接の時に知ったんです(笑)」。

特に「音楽がセットになっているお店が好き」だといい、シンガーソングライターとして活躍する曽我部恵一氏がオーナーを務める『八月』のようなお店で働くことは憧れだったといいます。『八月』も『CITY COUNTRY CITY』同様、店内では曽我部氏がBGMの選曲を担当し、『八月』が入居するビルの3階部分も曽我部氏が手がけるレコード店『PINK MOON RECORDS』になっています。

店内に飾られているのはサニーデイ・サービスの『DANCE TO YOU』のジャケット

飲食の仕事に感じる、受け手の反応を直接見られる喜び

私服姿のじょいさん

現在は週1〜2回、昼前から夕方にかけて『八月』に勤務し、注文を受けたりドリンクを作ったり、料理を運んだり、お会計をしたりとホール業務を担うじょいさん。このほか週に3日ほど業務委託でデザインやイラスト仕事を行い、それ以外は個人委託のデザイン業務や自身の制作活動を行っています。

じょいさんが描いたイラスト

仕事の両立は大変そうにも思いますが、「体力面では問題ありません。シフト調整で気をつけなくてはいけない部分はありますね。デザインやイラストの制作は1人でやる作業がほとんどなので、、ここでの仕事は人と触れ合える癒しの時間になっています。頭や体の使い方も違うのである意味気分転換にもなっていて、生活にもリズムができていいですね」と、自分にとってベストな働き方ができていると話します。

「飲食の仕事は自分の見えるところで、お客さんがリアクションを返してくれるのがいいなって思っていて。どのメニューにしようか悩んでいる姿とか、美しく盛られた料理を撮影する様子とか、おいしそうに食べている姿とか、そんな様子を見ているだけで楽しいです」。受け手の反応を目の前で見る喜びを、飲食の仕事では味わえるといいます。

「カレーってそんなスペシャルな食べ物ではないかもしれませんが、日々の楽しみとして食べにいらっしゃる方たちがいる。そんな小さな幸せの瞬間に居合わせることができるのは、とても素敵なことだと思っています」。店舗は路面店に位置するため、フラッと入ってくるお客さんも多く、予期せぬ出会いにもじょいさんは面白さを見出しているんだとか。

10種類以上のスパイスを使って作り上げる無添加カレーが自慢

そんなじょいさんがおすすめするメニューは「あいがけキーマ」。海老カレーやポークカレーなど数種類あるカレーから好みのものを選び、キーマカレーと組み合わせられるメニューで、中でもチキンカレーとキーマカレーのあいがけが一番人気だそう。

カレーを作り上げるのは『CITY COUNTRY CITY』で腕を振るった『八月』店長の尾関太一さん。とっておきのカレーレシピは、オーナーの曽我部さんとともに開発されています。

キーマカレーはクミンやマスタードシードのホールスパイス、コリアンダーやジンジャー、ブラックペッパー、ターメリックなどのベーススパイスを煎ってからテンパリングし、香り高く仕上げます。粗挽きの豚ひき肉を使っていて、食感もよく、食べ応えも十分!

チキンカレーはクミンやコリアンダー、フェンネルなど10種類以上のスパイスを煎って粉砕してからテンパリングを行い、大量のタマネギなどの野菜とともに長時間煮込み仕上げます。タンパク質が凝固しないように低温で仕上げた鶏モモ肉はしっとりジューシーで、驚くほどやわらかい! サラッとしたルーはタマネギや野菜のうま味も凝縮されていて、あとからスパイシーな刺激と風味が舌をくすぐります。

カウンター席がメインのこじんまりした店内を包みこむ、スパイスの豊かな香り。心地よいBGMに耳を傾けつつ、穏やかで楽しそうに働く彼女を横目に、出来立てのスパイスカレーを口に運ぶ幸せ。おいしいスパイスカレーをさらにおいしくしてくれる、そんなお店の人のぬくもりがここ『八月』には宿っていました。

かわいらしいイラストが施されたカレー皿は、姉妹ユニット・ちえちひろが手がけています。実はひと皿ずつ異なるデザインとなっており、どんな絵柄と出会えるかは完食してからのお楽しみ。

八月(はちがつ)

〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-14-19

11:00〜22:00(L.O 21:30)年中無休

03-5787-6304

(ライター/中森りほ カメラ・編集/高山諒+ヒャクマンボルト)

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