【後編】飲食店の確定申告、抑えるべきポイント〜経費の対象と手順〜

飲食店を経営している場合、1年間の収支を税務署に申告して、所得税を支払わなければなりません。しかし「税務は複雑でよく分からない」「これは経費になるの?」と悩む人も多いはず。今回は飲食店で押さえておきたい、確定申告のポイントについてご紹介します。前編でおはなしした青色申告にすべき理由に続き、後編では具体的な対応方法について解説します。

まずは前編をどうぞ

【前編】飲食店の確定申告、抑えるべきポイント〜青色申告にすべき理由〜

経費になりうるものは?

確定申告は、売上から必要経費(青色申告の場合は、青色申告特別控除も)を差し引いて「所得」を求め、所得に対して支払う税金を計算・納付するものです。そのため、何が経費になるのかを把握することが非常に大切です。

基本的に「事業で使うもの」は経費として認められます。飲食店で使用する主なものと経費を下記の表にまとめてみました。

項目 内容
仕入 料理に使う食材、ドリンクなど
給料賃金 スタッフの給与や賞与など
外注工賃 加工品や修理など、社外に依頼した場合の費用
減価償却費 調理器具、パソコンなど(使用可能期間が1年以上で取得価額が10万円以上の固定資産)
地代家賃 お店の家賃や土地代など
租税公課 事業税、固定資産税、印紙代などの税金
荷造運賃 商品を送るときの送料、段ボールなど
水道光熱費 水道料金、ガス代、電気代など
広告宣伝費 チラシやショップカード、Webサイトの作成費、新聞や雑誌への掲載料など
損害保険料 店舗や機材が加入する保険料
修繕費 店舗や調理機材の修理代など
消耗品費 おしぼり、割りばし、ストロー、洗剤、調味料、事務用品など
福利厚生費 スタッフの労災・健康保険料・雇用保険料、制服代など
研修費 勉強会への参加費など
サービス費 店内で流す音楽の使用料など

また下記のようなものも、経費として認められる場合があります。

スタッフへのまかない

スタッフへのまかないは、経費に含めることが可能です。無料でまかないを出しているのなら「給与」、スタッフが半額以上を負担し、1人に対して会社が負担する額が1ヶ月3,500円以下なら「福利厚生」に計上します。

もし給与となった場合には、源泉徴収額が増えるため経理や支払いが負担になることがあります。福利厚生を選んだ場合でも、税務署からの指摘に答えられるよう、毎回まかないの金額を計算しておかなければなりません。

どちらを選ぶかは会社で自由に決められますので、自分のお店に合っている方を選びましょう。

まかないの取り扱いについてはこちらで解説

まかないは福利厚生とすべし!正しい処理方法は?

他店での食事代

飲食店を経営している方は、他店に食事に行ってメニューの参考にしたり、市場調査をしたりすることがあるでしょう。このような場合の費用は「研修費」として計上できます。

ただし、この場合は領収書と一緒にレポートを作成し「勉強や調査のために行った」という証拠を残しておく必要があります。プライベートとしっかり区別しておきましょう。

なお、接待や事業に関係のある懇親会などは「接待交際費」、打ち合わせのための食事やカフェ、レンタルスペース利用であれば「会議費」、スタッフの歓迎会や慰安目的のイベントなどは「福利厚生費」というように、目的に応じて経費に計上できます。

いずれの場合も、誰と何の目的で行ったのか、必ず詳細が分かるように記録し、領収書も保管しておく必要があります。

「交際費」「会議費」「福利厚生」…個人事業主と法人で取り扱いが変わります

飲食店の場合、個人事業主と法人どちらで事業をおこなっているかにより、経費の取り扱いが変わります。

ここでは、経費としてどこまでOKか迷いやすい「交際費」「会議費」「福利厚生」の3点についてご説明します。

接待交際費

接待交際費ですが、法人の場合は上限があります。

「期末の資本金の額、または出資金の額が1億円以下」の企業の場合、以下2つのどちらかを経費とできます。

  • 定額控除限度額(年間800万円)以下の接待交際費の全額
  • 接待交際費のなかの接待飲食費の金額×50%の金額

なお、総支出額を参加者の人数で割った1人あたりの金額が5,000円以下の飲食代は接待交際費から除外し、会議費としても処理できます。

  • 得意先との外食代
  • 得意先と開催するパーティ代
  • 得意先へ出す弁当、お茶代
  • 得意先へのお歳暮、お中元(★)
  • 得意先との旅行等の交遊代(★)
  • 接待後のタクシー送迎代(★)
  • 得意先主催のイベント参加費(★)
    など

会議費は飲食代に限ります

上記のうち(★)がついているものは飲食代に該当しません。接待交際費として処理しましょう。

個人事業主の場合 個人事業主は、1回あたりの会計金額、総額ともに上限はありません。 今後事業につながると見込める懇親会や会合であればもちろん計上可能ですが、単なる友人や家族との交際費が混在することのないよう注意しましょう。

いずれの場合も接待目的であるとわかる書類を残しておく必要があります。具体的には以下のとおりです。

・その飲食等のあった年月日
・その飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
・その飲食等に参加した者の数
・その費用の金額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地
・その他参考となるべき事項

上限がないとはいえ、あまりにも交際費が高額になると税務署から指摘を受ける可能性もありますので、5,000円以下の飲食代は会議費としての処理が望ましいでしょう。

会議費

会議費に該当するものは以下が挙げられます。

  • レンタルスペースや個室などの会議会場費
  • 会議で出す弁当、お茶代
  • 会議で使うカメラやプロジェクターといった機材のレンタル費用
  • 飲食店で会議をした際の飲食代
  • 1人あたり5,000円以下/回の接待交際費

なお、カラオケなど会議と関係ないお店での利用料や、会議以外で発生した飲食代は計上できませんので注意してください。

法人・個人事業主どちらも会議費に1回あたりの飲食代以外は特に上限が設けられていません。接待交際費とおなじく個人利用等無関係なものが入ってしまわないよう注意して管理しつつ活用しましょう。

福利厚生

「福利厚生費」は(業務とは直接関係なくても)従業員のために支出する費用を指します。

福利厚生は、大きく法定福利厚生と法定外福利厚生の二つに分けられ、前者はいわゆる社会保険(雇用保険、健康保険、介護保険、労災保険、厚生年金保険)のことを指します。後者は住宅手当や交通費など、従業員の採用力や満足度アップのために企業独自でもうけているものをいいます。具体的には以下があげられます。

  • 従業員の家賃補助
  • まかないなどの食事代
  • 健康維持のためのスポーツクラブ利用割引

ポイントは、全従業員が利用可能でかつ常識の範囲内の金額であること。人によって利用可否がわかれるものは対象にならないことがあります。

なお、従業員に研修を受講させる際、業務に関係するものは「研修費」となりますが、それ以外に資格取得などの補助をしてスキルアップを促したいという場合は「福利厚生費」となります。目的にあわせて適用しましょう。

また、福利厚生費はあくまで従業員のためのものなので、個人事業主には原則認められません。家族も同様にNGです。個人事業主でも家族以外の人を従業員として雇っている場合は、福利厚生費を計上できます。

福利厚生費は対象がしっかり定義されているわけではないので、対象にあたるか判断に迷ったらまずは税理士に相談することをおすすめします。

手順

ではここからは、確定申告の手順をご説明します。

1)申告書の入手

まずは確定申告に必要な書類を入手しましょう。書類は税務署や各市町村の窓口で配布しています。 おすすめなのは、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」です。Web上で申告書を作成できるため、税務署や市町村窓口に書類を取りに行く必要がありません。

確定申告書等作成コーナーでは、ガイドに従って金額等を入力すれば、簡単に申告書が作成できます。データは途中で保存可能。また、昨年のデータを読み込んで翌年に使用できるため、記入の手間を省くこともできます。作成した申告書はe-taxで税務署に送信できるほか、印刷して郵送することも可能です。ただし、e-taxで申告書を送付する場合、マイナンバーカードなどの電子証明書と、それを読み取れるICカードリーダライタ、もしくはマイナンバーカードの読み取りができるスマートフォンが必要です。

なお、令和2年分の確定申告書等作成コーナーは、令和3年1月4日に公開されています。

2)申告書に必要な書類を確認

次に申告書に必要な書類を確認します。申告書以外の書類で重要なものは、生命保険料などの控除証明書です。これがないと、控除を受けることができません。控除証明書には、以下のようなものがあります。

  • 生命保険料控除証明書
  • 地震保険料控除証明書
  • 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書
  • 寄付金控除証明書

生命保険料控除証明書と地震保険料控除証明書は、加入している保険会社から送られてきます。社会保険料(国民年金保険料)控除証明書は日本年金機構から、寄付金控除証明書は寄付金を受け取った団体などから入手できます。

3)申告書を作成

書類を揃えたら申告書を作成します。青色申告で提出する必要がある書類は「確定申告書B」と「青色申告決算書」の2つです。

確定申告書B

確定申告書Bは、事業収入や所得控除、源泉徴収額などを記載する書類です。先述した国税庁の確定申告書等作成コーナーや会計ソフトなどを利用すれば、画面に金額を入力するだけで税率計算を行ってくれます。

こちらには、源泉徴収票や控除証明書の添付が必要なため、関係書類をのりづけしてまとめておきましょう。現在では控除証明書は電子的交付も行っており、確定申告書等作成コーナーからオンラインで送付することも可能です。

青色申告決算書

青色申告決算書は合計4枚の書類があります。それぞれ、

  • 1枚目:売上と経費
  • 2枚目:月ごとの収入と仕入、スタッフへの給与
  • 3枚目:減価償却費と地代家賃、税理士がいる場合にはその報酬
  • 4枚目:貸借対照表

となっています。
1〜3枚目までが損益計算書で、1枚目は経費の概要、2枚目と3枚目が経費の詳細です。基本的に確定申告書Bに記載した所得の内容を証明する書類となっています。

4)申告書を提出

必要な書類を揃え、記載が完了したら申告書を提出します。不足している書類や記入漏れがないか、よく確認しましょう。

まとめ

確定申告は難しいイメージがありますが、ポイントを押さえれば問題なく提出ができます。申告の受付が始まってから焦ることのないよう、普段から準備しておきましょう。

今回はここまで。

次回は飲食店の節税どうする?コロナで売上が下がったお店は猶予制度も活用しようをご紹介します。