飲食店「よくある人間関係トラブル」の解決方法とは?

「お店の人間関係が悪い」ということは、多くの飲食店経営者・店長が抱える悩みです。スタッフの人間関係が悪化すると、店内の雰囲気やサービスの質に悪影響を及ぼし、結果的に売上を大きく下げることにもなります。場合によっては、複数のスタッフが同時に辞めてしまうことも。ただでさえ他業界に比べて離職率が高く、恒久的な人材不足から抜け出せない飲食業界において、これは大きな問題です。そこで今回は、飲食店でよくある人間関係のトラブル事例を紹介しながら、具体的な対策を紹介していきます。

店長を悩ませるスタッフ間の対立

2つの集団を対立へ導くものの正体とは?

ちょっと、ホールさん!料理出来たらすぐ運んでっていつも言ってるだろう!

そうは言っても、こっちもドリンクも作らないといけなかったし、忙しかったんですよ!

多くの飲食店が抱える悩みとして、「ホールとキッチン」「早番と遅番」など、スタッフが2グループに分かれて対立するという問題が挙げられます。個々に接すれば素直で優秀なスタッフが、なぜ対立してしまうのでしょうか。

私たちの周りには、「東京と大阪」「営業部と管理部」「男性と女性」など、さまざまな対立の構図が見られます。しかし客観的に見た場合、どちらかの意見が一方的に正しい、もしくは間違っているといったケースはほとんどありません。つまり対立を引き起こす要因は、単なる立ち位置の違いに過ぎないのです。

アメリカの社会心理学者ムザファー・シェリフ氏を中心に行われた「ロバーズ・ケイブ実験」においても、同様の結論に至っています。この実験は、年齢や性別、家族構成、生活環境までよく似た小学生たちが、サマーキャンプを通じてどのような人間関係を築くのかを観察したものです。参加した22人の小学生を2つのグループに分け、まずは各グループで過ごさせました。そしてこの段階では、子どもたちに別のグループの存在は知らされていません。

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その後、第二段階として別のグループの存在を伝え、野球やゲームなどで競わせます。すると2つのグループは、お互いのテントを荒らす、残飯を投げ合う、そして最終的にはスタッフが介入するほどの大乱闘を起こすなど、激しく対立しました。 多くの類似点を持つ子どもたちを集めたわけですから、両者の違いは単に「別のグループ」という立ち位置だけです。そう考えると、相手を敵として認識してしまう原因は、自分たちが築いてきたチームの存在を脅かすのではないかという「恐れ」だと考えられます。

リーダーにしかできない「対立」の解消法

対立の背景にあるものが「立ち位置の違い」と「自身の環境を守りたい」という感情だとすれば、リーダーにできることはひとつしかありません。それは、両者の立ち位置を近づけることです。

実は、先ほどご紹介した「ロバーズ・ケイブ実験」には続きがあります。大乱闘を起こすほど激しく対立した2つのグループですが、キャンプ場の給水が止まったり、買い出しに行くトラックのエンジンが動かなかったりするなど、「お互いが協力せざるを得ない状況」を意図的に作ったところ、全員で協力するようになったそうです。最終的には、グループの枠を超えた個人的に良好な関係も見られたというから驚きです。

では、この状況を飲食店に当てはめるとどうなるでしょうか。例えば、仕込みが追いつかないときにホールスタッフが簡単な仕事を手伝ったり、ホールの準備が間に合わないときにキッチンスタッフがフォローしたりといったことが考えられます。これは簡単ではないかもしれません。ですが、リーダーがホールとキッチンの仕事、早番と遅番の作業を分け隔てなくフォローすることはできます。

こっちの手が空いてるときはホールを少し手伝うようにしたら、回転が早くなった気がする…!

キッチンを少し手伝ってみたら、仕事の理解が深まった。こんな丁寧な仕込みが必要だなんて知らなかったな。

実際に、ホールの責任者がキッチンの仕込みを毎日手伝うことでホールとキッチンの対立が解消され、30名以上のスタッフがまとまり売上記録を更新したという例もあります。おすすめメニューの販売数を共通の目標とし、全員で協力して売り切るといった方法もあるでしょう。対立を解消するきっかけを与え、そもそも対立の起こらない仕組みを作るのは、やはりリーダーの仕事なのです。

リーダーよりも「リーダー的」なスタッフとの確執

「目の上のたんこぶ」はこうして生まれる

飲食店に限った話ではありませんが、年齢やキャリア、職歴などにより、リーダーよりも強い影響力を持つスタッフが存在することがあるかもしれません。これもよくあるトラブルの要因です。

新人店長?マニュアル?そんなものよりもこの店で5年バイトリーダーをやってる俺がルールだぜ!

例えば新人店長の場合、着任したお店で作業手順や方法を変えようとしても、「今までこうしてきたから」と古株のスタッフに反発されて変えられない、もしくは年上の料理長が自分の指示を素直に聞いてくれない、といったケースもあります。こうしたことが起こるのは多くの場合、前任の店長が大きな影響力を持っていたり、逆に頼りない店長だったために実質的なリーダーが別にできてしまったり、という背景があるためです。「店を動かしてきたのは自分たちだから、あれこれ指示されたくない」という気持ちもあるでしょう。

たとえ立場や役職が上位であっても、第三者から任命された「形式上のリーダー」より、「自分たちが選んだリーダー」の意見が優先されるのは、仕方ないことかもしれません。とはいえ実質的なリーダーは、立場上のリーダーからすれば「目の上のたんこぶ」と言いたくなるような存在でしょう。争いたくなくても、放っておけば勝手に新たなルールを決めたり、物事を進められてしまったりといったことにもつながります。

「目の上のたんこぶ」を「右腕」に変える方法

では、どうすれば実質的にリーダーのようなスタッフを、自分を支えてくれる存在にできるのでしょうか。視点を変えると、そのヒントが見えてきます。

このような人は、立場上のリーダーを「年下なのに」「大した経験もないのに」「お店のことを何も知らないのに」などと考えています。要するに、相手が劣っていることを理由にリーダーの存在を軽視しているわけです。また、「お店を作ってきたのは自分だ」という自負もあるでしょう。

そこで、立場上のリーダーが劣っている点ではなく、実質的なリーダーが勝っている点にフォーカスを当てるとどうなるでしょうか。

年下なのに→年齢に応じた実績を持っている
大した経験もないのに→自分にはない経験をしている
お店のことを何も知らないのに→お店のことは何でも知っている

このように、相手を頼るべき理由が見えてきます。立場上のリーダーに反発する裏には、「自分のことを認めてもらえるだろうか」という不安な気持ちが隠れていると言えます。しかし、頼られればそうした不安もなくなるはずです。

人間は変化を嫌う生き物ですが、本来嫌うのは外部から受ける変化であり、自ら望んだ変化は「成長」や「進歩」と捉えるもの。リーダーから頼られることは、自分の存在の価値を認められるという意味を持ちます。相手を認めて頼ることで、結果的に強力な右腕を得られるのです。

△△さん、お店のことなんでも知っていて頼りになります。もっと良いお店にしていくために、色々教えてくださいね。

まとめ

アルバイトが多く、スタッフの入れ替わりも多い飲食店にとって、良好な人間関係の維持は簡単ではありません。しかし相手の視点で問題を考えれば、答えは見つかるでしょう。多くの場合、スタッフの対立を生み出すのは「立ち位置の違い」です。そのことを理解すれば、それぞれの立ち位置を近づけることで解決できると言えます。目の上のたんこぶのようなスタッフも、相手の優れた点を認めて頼ることで、右腕に変えることができるでしょう。「こうしてほしい」と望むのではなく、「なぜそうなるのか」を相手の視点で考える。問題解決のヒントは、そこにあるのではないでしょうか。

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FOOD-IN編集部

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