バイトではなく「プランナー」?スタッフを活性化するヒント by JANAI COFFEE

これからの飲食店に必要なノウハウや考え方を、お店のみなさまへインタビュー連載「愛される店のカラクリ」。 お店ならではの”個性”が生まれた理由、大切にしている考え方を伺いながら、愛される飲食店の作り方をひもときます。

連載第1弾としてご紹介させていただくのは、2020年8月に恵比寿にてオープンした『JANAI COFFEE』。

一見すると何の変哲もないコーヒースタンドですが、ここは秘密の空間への入り口でしかありません。実はJANAI COFFEEは、コーヒー屋のふりをした「バー」。ある秘密を知っている人だけがこの先の空間へ進むことができます。

そんな不思議なお店づくりを実現した3つの考え方を、4回にわたりお送りします。

人に話したくなる体験を生む、JANAI COFFEEの作り方

Prologue:JANAI COFFEEが作り出す「ここに来ないと体験できない」価値
Point 1:スマホ1つで完結させるギミック
Point 2:お客さまを巻き込む共犯意識
Point 3:全スタッフがプランナー(本記事)


※クリックで飛べます

f:id:showcase-gig_official:20201208183005j:plain

風とおしの良い関係性が、みんなでお店を創り上げることにつながる

──コーヒー屋のふりをした「バー」という空間を成立させるにあたって、演じるスタッフさんたちをどう巻き込んだのか気になりました。アドリブも求められる以上、全員が主体的に動けないとどこかで綻びが生まれませんか?

大槻
そうですね。スタッフには、ディズニーランドのキャストのような振る舞いが求められるので。でも、全員が主体的に動いてくれるかというところは、そこまで意識していなかったんですよね。

お店に関するすべての情報を全スタッフに共有していることが、結果的に全員の主体性に影響しているのかもしれません。

f:id:showcase-gig_official:20201219164639j:plain

大槻
情報を公開することのリスクについても考えたんですけど、信頼している相手だったら情報を共有しないメリットってないなと思って。売り上げなどお金周りの情報はもちろん、僕たちが今何を考えてるかとか、これからお店をどうしようと思ってるかとか。

現場でお客さんと接してるのも、今のメイン層である20代前半のお客さんと感覚が近いのも、スタッフの大学生たちのはずで。僕らだけでは出てこないアイデアを彼ら彼女らに出してもらっているんです。

──一般的な飲食店よりもだいぶフラットな関係性なんですね。

大槻
そうだと思います。うちでは、スタッフを「アルバイト」とは呼ばずに「プランナー」と呼んでて、基本的に全員でアイデアを出し合ってお店の体験を作っています。

先ほどのお客さんの出入りに関する複雑なオペレーションも、みんなで役回りを変えながらシミュレーションをして作っていったものです。こんな面倒くさいお店で働いてくれてるんだから、少しでも楽しい方がいいかなという仕組みだったんですけど、結果的に上手く作用しているのかな。

──素敵ですね。初めは、共同経営者の三人が楽しく場作りをしていたところに、プランナーを巻き込んで、みんなが楽しく場づくりをしていると。

JANAI COFFEEの作り方3 全スタッフが「プランナー」 アルバイトでも、全員がプランナー。お店のあらゆる情報を知り、全員が同じ情報を持った上で意見を出し合うことができる。

JANAI COFFEEだけでは終わらない

──「コーヒー屋のふりをしたバー」という体験価値を最大化することを追求した結果が、このJANAI COFFEEの形なんだなと、とても腹落ちしました。大きな話にはなりますが、これから飲食店の体験はどのように変化していくと思いますか?

大槻
今って、オンラインの限界が見え始めている時期だと思うので、これからは飲食店に限らず、リアルの場所としての価値や体験が重要になっていくと思います。

f:id:showcase-gig_official:20201219164631j:plain

大槻
カフェのふりをしたバーなんて、絶対にオフラインじゃないと体験できないじゃないですか。隠し扉から中に入ったときの生の喜びとか、帰り際にコーヒーを渡されて共犯意識を持つ瞬間とか、その場にいないと体験できないものの価値が求められていくのではないでしょうか。

──飲食店に行くためのハードルが上がってしまった今、それでも行きたいと思われる飲食店はそういうお店なのかもしれないですね。それでは最後に、JANAI COFFEEとして今後見据えている展望を教えてください。

大槻
明確に次の展開を考えているわけではありませんが、一つの道として「JANAI」がブランド化していくのはありえるかなと思います。

僕たちは、みんなが集まれる場所、仲間作りができる場所を作りたいというのが根本にあるので、あまり飲食店として大きく儲けていきたい気持ちはないんですよね。

吉田
JANAI COFFEEを各所に、1号店、2号店、3号店と同じコンセプト・メニューで作っていけば、それなりに利益を出せる可能性はあるんですけど、別にそれをやりたいとは思わないんです。

それよりは、もっとみんなが作ってて楽しいと思えることに挑戦していきたいです。

まとめ

JANAI COFFEEは、スピークイージーのコンセプトをもとに、「コーヒー屋のふりをしたバー」というお店の体験価値を損なうことがないよう、日々試行錯誤を続けています。

その店づくりを紐解くと、これらの要素が見えてきました。

人に話したくなる体験を生む、JANAI COFFEEの作り方

Point1:スマホ1つで完結させるギミック
Point2:お客さまを巻き込む共犯意識
Point3:全スタッフがプランナー

JANAI COFFEEの体験の始まりは、「サイトに隠された秘密を解くこと」。この謎解きへの参加が、お店に直接足を運ぶ前からスマホ上で始まるという仕組みが、人が集まる要因なのだと思います。

そして、お客さんの体験価値を守るための入り口と出口で徹底した世界観の構築。帰り際の「コーヒー屋さんに行ったフリをしてほしい」というキラーフレーズによって、お客さんに共犯意識を持たせる仕掛けには唸ってしまいました。ここまで体験に一貫性があると、もはやテーマパークのアトラクションです。

この複雑な体験設計を「面倒くさい」で終わらせず、より体験価値を上げるためにどうすればいいか、心から楽しんでいるJANAI COFFEE。オンラインだけでは感じることができない、この場にいるからこその体験価値が、ここには確かにありました。

写真:藤原 慶 編集:Huuuu

早川大輝

written by

早川大輝

フリーランスの編集者・ライター。インタビューやエッセイの編集、執筆をしています。日常的にメモを残すのが癖で、エンタメや食べ物に関することを淡々と記録することが好きです。