飲食店にとって売上アップは重大な目標であり、そのための売上分析は欠かせないものです。分析を行うことでお店の課題を発見し、その対策を練って売上アップを狙います。そこで基本となるのが客数と客単価を把握すること。この記事では、飲食店が売上分析を行う上で基本となる客数、客単価の考え方から売上アップに活かすための方法までご紹介します。
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売上分析で客数と客単価まで考えるワケ
売上分析を行う上で多くの飲食店が見る指標が客数と客単価ですよね。自然と見るようになったという方も多いと思いますが、ここでは改めて、なぜ売上分析を行う際にこれらの指標で考えることが大切なのか、具体的に考えてみましょう。
例えば、ある飲食店で月に200万円の売上があったとします。月の売上だけを見れば、このお店では十分目標を達成できていました。ところが客数と客単価まで見てみたところ、このお店はお客様の数自体は少なく、客単価が高かったために目標を達成していたと分かりました。
今月は客数は減ってたけど、客単価が上がっていたから目標達成できたのか
もしこの客単価がお店の立地や業態に合わない高さであった場合、客単価が合っていないという課題に気付けたこのお店は、「あのお店は高い」という印象から客足が遠のく前に客数と客単価の調整という改善策をとることができます。
想定している客単価より大幅に高いな。来月は単価を調整して客数を増やす方法を考えよう
このように、売上は単に目標を達成できているかだけでなく、客数と客単価まで考えることが大切です。売上と客数、客単価を把握していれば、今お店にどんな課題があり、今後どのような売り方をしていくべきかが分かってきます。
客数、客単価とは?
客数、客単価の把握が大切と分かったところで、続いては「客数」と「客単価」についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
客数とは?
客数とは、お客様の数のことであり、そのお店に1日に入る最大の客数は、お店の広さや席の数、回転数によって違ってきます。 例えば、50坪のレストランで厨房の面積が20坪であれば、残りの30坪がお客様の席を用意できる面積です。1坪あたり2席が標準とされているため、このお店に置くなら15席程度を用意できることになります。 あとは、このお店で何回お客様が入れ替わるのかによって客数が決まります。例えば、お客様が1席につき2回入るのであれば、15席×2=30で30人のお客様が来ることになります。1日の最大客数は、目標客数の設定や売上予測にも役立つため、把握しておくとよいでしょう。
席数を計算する際の目安
お店のコンセプトにもよりますが、最大客数を計算する際に必要な席数は席同士の間隔をゆったりさせたい店舗で1坪あたり1.5席程度、普通なら2席程度、少し間隔を狭くするなら2.5席程度が一般的とされています。客単価とは?
客単価とは、1回のお会計でお客様1人あたりが使ってくれた金額のことです。客単価は売上を客数で割ることで求められます。 適切な客単価はお店のコンセプトによって違いますが、まずは自分がお客様になったとき、何をどのようなセットで頼むのかを考えてみましょう。それがお店にとっての理想的な客単価です。できれば自分だけでなく「女性ならこう頼む」「男性ならこう頼む」など、さまざまな客層で考えてみると良いでしょう。
客数と客単価を把握すると「売り方」が見えてくる
一般的に、売上をアップするためには「客数を増やす」か「客単価を上げる」のどちらかに取り組む必要があります。 客数と客単価を把握すると、売上アップのためにお店がどちらを優先して取り組むべきかが見えてきます。
例えば、下記のような目標を掲げる店舗が2つあったとします。
【目標】1日の売上:10万円 客数:34人 客単価:3,000円
実際の売上や客数、客単価は、各店舗で次のようになりました。
【A店】1日の売上:8万円 客数:40人 客単価:2,000円
【B店】1日の売上:8万円 客数:20人 客単価:4,000円
この数字を見て分かることは、各店が売上を目標までのあと2万伸ばすために、客数を増やすことと客単価をあげること、どちらを優先して取り組むべきなのかということです。A店であれば客単価を上げる取り組み、B店であれば客数を増やす取り組みを優先して行うと良いと分かります。
現状の客数や客単価によって、売上アップのために行うべき取り組みは異なる
まず自分のお店の客数と客単価を求め、営業状況を的確に把握することが大切です。
客数を増やす販促例
では、どうすれば客数や客単価を増やせるのでしょうか?まずは客数を増やすための方法をご紹介します。
お客様は主に「新規」と「リピーター」の2つに分けられます。
リピーターを増やすには
お客様にとって印象に残る場所だと思ってもらうことが大切です。具体的には以下のような方法があります。
- 店内環境を清潔感・利便性を中心に整備する
- お客様の顔を覚えて仲良くなる
- 季節メニューやインパクトあるメニューを作成する
- ポイントカードや割引クーポンを発行する
新規とリピーターの理想比率は3:7
新規とリピーターの理想比率と言われる3:7を目指して、どちらも同時に増やすことが理想ではありますが、新規の獲得はリピーターの獲得に比べて5倍コストがかかると言われています。 もし最初から両方目指すことが難しい場合はリピーターを増やすことから取り組んでみましょう。新規を増やすには
もちろん、新規のお客様を獲得することも大切です。 具体的には以下のような方法があります。
- TwitterやInstagramなどのSNSを活用する
- チラシ、ビラを作ってお店付近に配布する
- 集客用に利益の少ないメニューを作る
- 「ここでしか食べられない」など、多店舗との差別化を図る
お店にとって無理なくできることから初めてみましょう。
特にSNSによる集客は有効的
他記事ではSNSの活用に役立つ情報をまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
Instagramに何を投稿したらいいかわからない?基本ご紹介
スマホでOK!飲食店の撮影、基本の“キ”
すべての飲食店に捧げる、Web上の情報整理のススメ
客単価を増やす販促例
客単価を増やためにできることとしてはまず、「声掛け」があります。 スタッフにおすすめされたらついつい頼んでしまった。ということはよくありますよね。 今すぐに出来る販促として是非徹底してみて下さい
こちら季節限定で、おすすめのメニューになっています!
追加のお飲み物はいかがですか?
もう一つは、メニューの値上げがあります。とはいえ、ただ値上げをしただけでは、お客様が納得できないでしょう。大切なことは、お客様が納得できるようメニュー変更にすることです。例えば、価格を上げる代わりに新しいトッピングを追加したり、素材を少し良いものに変更してメニューブックでアピールする、全体のバランスを考慮して値下げメニューを作る、などが挙げられます。 このほかにも例えば以下のような方法があります。
- メニューに「おすすめ!」「一番人気」など、頼みたくなるワードを追加する
- メニューに「松竹梅」を設け、3段階の価格設定にする
- セットで頼めるメニューを増やす
- 記念日にしか頼めないスペシャルメニューを作る
このように、メニューの変更で客単価を増やすには、何らかの工夫が必要です。お客様が狙ったメニューを選びやすくなるように、メニュー表や店内ポップなども工夫してみましょう。
メニュー分析も併せて行うとより効果的
メニュー変更を検討する際は、売上に貢献しているメニューの分析も併せて行うとより効果的です。
【初心者向け作業シート付】お店に貢献してるメニューは?データでしっかり分析しよう
さらに客数を増やすなら
さらに客数を増やしたいと考えるなら、テイクアウトやデリバリーを取り入れてみましょう。店内は席数が限られているため、どうしても入るお客様には限界があります。しかし、テイクアウトやデリバリーであれば、席数を増やさずとも売上アップが期待できます。テイクアウトを始める際に必要なことなどは以下を参考にしてみてください。
テイクアウトの基本ルール守れていますか?
まとめ
売上はただ金額を見るだけではなく、客数と客単価にも注目して考えるようにしましょう。これらをきちんと把握すれば、より売上を伸ばすために、客数を増やすべきなのか、客単価を上げるべきなのかが分かってきます。 客数や客単価を上げるにはさまざまな方法があるため、お店のコンセプトを壊さないように、できるものから実践していくと良いでしょう。
次回は「飲食店が行うポスティング。その効果や費用は?」をご紹介します。